2021/07/18
オープンハンドへの道
いやな、宣言したら本当にやらないかんからな、本当は言いたくなかったのだが・・・(笑)
ドラムの叩き方というのは、右利きだと必然的に右ばかり使ってしまうような叩き方が「普通」である。
Jazzなんかやり始めて、スウィングのリズムを叩いてると「もっと左手が動いてくれんか?」と思うことが多い。
若かりし頃、左手を鍛えるために左利き用のセットで練習しようと思い立って断念した(>_<)
当時でも10年以上ドラム叩いていて、それが一瞬で「ゼロから出発」なのだから「無理!(>_<)」ってなもんである・・・
まあここに来て、50年近く叩いてるスタイルを全部捨てて「ゼロ」から始めるのもしんどい(>_<)
そもそも私のポリシーとして、「まがりなりにもいくばくかのお金をもらってステージに立っている以上、プロなのだから何があっても絶対にミスをしない!!」というのがある。
「面白そうだから」とかの理由で、失敗するかも知れないこと、いやそれ以前に「演奏レベルが下がること」を絶対にやってはいけないと思う。
そんなこんながあって左手克服のプロジェクトは長く封印されていたのだが・・・
布衣の新譜に入っているこの曲、両手を交差してハイハットを叩くため、時々ぶつかり合って、一度などぶつかってスティックを落としてしまった・・・(>_<)
そもそもドラムセットというのは、もともとはハイハットは「叩く」ものではなく「踏む」ものだったと言う・・・
デキシーランドジャズみたいなリズムをチンタチチンタチ叩いて、スネアと同じタイミングで2、4に踏んでいたものだったらしい・・・
だから元々ハイハットはこんな高い位置にあったわけではなく、足元に低くセッティングされていた・・・叩かずに踏むだけだからそれでよかったのね・・・
ところが誰がやり出したのか高い位置に置いてそれを叩き始めた・・・
そうすると右手でライドを叩くのをそのままハイハットに持って来ると、どうしても腕が交差してしまう。
それを解決するために、メタルドラマーなんかはハイハットをむっちゃ高くセッティングして、その下で左手を何とか自由に動かそうとする。
でもこれってメタルばっか叩いてるうちはいいけど、スティックはハイハットの縁を横っ面から叩くしか出来ず、ハイハットの上側の中央部を叩く繊細な音色は出せない。
(手をむっちゃ高く上げてハイハットより上の位置から叩くしかないゆえ)
ところがこれを解決する別の方法が「オープンハンド」と言われているこの方法である。
つまりライドを叩いてる時とハイハットを叩いてる時の手順を左右逆にするだけの話である。
「だけの」と言うが、これが今まで50年やって来た全ての手順を全部ゼロからやり直すのは大変な作業である(>_<)
ところが、この曲のこのリズムは「パラパラディロル」すなわち「RLRLRR LRLRLL」の手順そのもので、右手から始まったフレーズは次には左から同じ手順を踏む。
つまり「右でやってることは左でも同じことが出来る」というわけではないか〜!!!
・・・ところがやってみたらこれが大変(>_<)
基礎練習でやってる分にはいいが、こうして「リズム」を叩いてみると、すぐに壁にぶつかることとなる・・・
この「リズム」は「ハイハットが主」であり、その手順を補佐するゴーストノート(弱い音)をスネアで拾いながら、アクセントの位置だけスネアを強く叩く・・・
つまり「RLRLRR LRLRLL」の後半は単に手順を逆にしただけの話ではなく、「R0R0RR LR0R00」(0は休符)のハイハットのリズムを、合間にスネアのゴーストノートで埋めているというものなのである。
単に「左右ひっくり返したら叩ける」というものではなかった(涙)
「ドラムは耳で叩く」とよくレッスンで教えているが、「ハイハットの粒は揃ってますか?ゴーストノートの音量は一定ですか?」などと耳でリズムに集中しながら細かいコントロールをしてゆくわけだが、この「脳から腕に与える命令」というのは、長年の訓練の結果「非常に曖昧な命令」として定着している。
例えば4泊目のハイハット(最後のRLLのR)はこのハイハットのリズムの「オチ」というか解決する大切な音で(もちろんそんなことを考えて叩いているわけではないが)、耳が「この音がちゃんとリズムに入ってて音色がそれっぽく、流れがスムーズでタイトな感じ」みたいなものを常に聞いていて、ちょっと違うなと感じると「ちゃうよ」と脳に伝え、脳が「ほな微調整〜」と調整する、「リズム」というのはその連続を常にやっているわけで、それは「この左手がどうの」とか考えてやっているわけではない(そんな細かく命令を出してたら間に合わない)。
だから、左手でハイハットを叩いている時に「なんか違うな」と感じたら、脳が「ちゃうよ〜」と命令を出して、自然にそれを右手が直そうとするのな!(◎_◎;)
いやほんま、身体というのはうまいこと出来てます〜
これまで50年近く、右手が全てのリズムをリードして左手がそれを補佐して来たのが、いきなり左手がメインになると命令系統がぐしゃぐしゃになるんですな・・・
だから、最初に戻って、まず右手はアクセントの音だけ叩いてゴーストノートをやめたものから始めてみる。
「R0R0RR LR0R00」(0は休符)ですな。
「パラパラディロル」の左右ひっくり返したものだと、やはり後半は右手が主となってリズムを構築しているが、それではハイハットの強弱に対する命令を出した時に無意識に右手が反応してしまうのだ・・・
ハイハットのリズムは1拍目が大きく、次がグッと下がって段々大きくなって最後の4拍目にまた大きくなるという一小節の「波」をまず左手だけでちゃんと作って、それに右手を「添える」んですな・・・
こうして数日間、寧夏回族自治区銀川市のドラムスクールの一室では、「むっちゃくちゃ下手な初心者ドラマー」が練習する「むっちゃくちゃ下手なリズム」が毎日鳴り響くことになる(笑)
いやその練習を実は中国のTikTakで生配信してたのだが、左右を逆に叩いていることまでわからない人は「Funkyさんって実はむっちゃ下手なのね」と書き込みして幻滅して去ってゆく(笑)
しゃーないなぁ〜・・・これが「オープンハンドへの道」(笑)
まだ本番で使えるレベルなのかどうかは次のリハーサルで試してみるまでわからんが、オープンハンドの利点としては、このリズムで最後のダブルの部分をフロアタムで叩くというのが、従来の腕が交差している状態では不可能なのな。
この利点は「右手の自由度」という点では大きい!!
この曲のイントロのリズム、これは3拍子ラテンのリズムなのだが、これをオープンハンドで叩くのにもトライしてみた・・・
人間の脳というものは面白いもので、「リムを叩け」という簡単な命令を脳は出しているだけで、それを受けて何も考えずに左手がリムの位置に移動する「オートメーション」が実は行われていて、右手でリムを叩くなど身体に一切入ってないわけなので、左手はシンバルの位置に移動してるんだけどリムを叩く形になってるだけで右手は全然リム叩いてなかったり(笑)
それを一生懸命克服する・・・っつうか命令系統を構築し直すんですな・・・
再構築ちう〜
右手でリム叩くん難しい〜(笑)
どこをどの形でどのように叩けばいいのか右手が一生懸命探してるし〜(笑)
まあ全ては「慣れ」やな。
普通のラテンのリズムも練習しとこう〜・・・このパターンも通常の叩き方だとハイハットで同じようにタムを絡ませるのは無理やからな〜
まあ次のツアー開始まで2ヶ月あるからな、下手くそと詰られながら練習してみますか〜・・・