2019/06/12
中国の契約書との戦い
もちろん私が最初に中国に行った時にはこんな感じではなかった。
ロックミュージシャンに機材を買って来てくれと頼まれて、
税関で没収されたらコネを伝ってそれを裏口から出す。
まあ「法律」なんか「上に政策あれば下に対策あり」なのだから何のためにあるのかという話である・・・
まああれから30年近く経ってるのだから中国も近代化して来て当たり前!!
でも「昔は良かった」という部分もあるわけで、このままガチガチで日本みたいに全く融通の効かない国になったら魅力半減という部分もある・・・
大きな山が動いた・・・私が30年近く前に作って、そのまま日本に絶望して中国に渡ってしまったために忘れ去られていたコンセプトアルバム「ある愛の唄」の中国語版がついに実現となったのだ。
日本人の音楽業界人には信じられないことかも知れないが、
今では著作権ビジネスが日本より進んでいるかもという中国のこと、
当然ながら彼女のような大歌手に歌ってもらおうとするならば会社が出て来て「契約書」などの締結が必須である。
彼女は彼女で事務所にこう伝えたと言う・・・
「Funkyは私のことをとても愛しているからお金は要らないと言うけど、そこはそこできちっとしてあげてよね」
ここで言う「愛」は、世間で言う「愛」とはちょっと違う。
非科学的なことを言うなら、彼女は前世でもきっともっと前でもいつも一緒にいたような気がするが、男女としてはいつも一緒にいない・・・
そう、「自分の分身」か「家族」のような感じである。
今世では一緒に「亜州鼓魂」と彼女のデビューアルバムを生み出しただけである。
そのおかげで彼女はスターになり、私はこうして中国での地盤を確固たるものにした。
そして今は・・・時々思い出したように数年に一度食事をしたり、
まあSNSとかで相手が元気なことを確認しては「ほっとする」・・・
そう、「分身」なのだから不幸になってくれたらちと困る。
お互いにチラ見して「ああ元気そうだな」と言うと「安心する」・・・そんな関係である。
まあこのアルバムをどうしても彼女に歌ってもらいたかったというのも、こう考えれば「必然」のような気もするし、布衣のツアーで彼女の住む海南島三亜に訪ねて行った時も、漠然と「こうなるだろう」とは感じていた。
そしてそこからが大変であることも重々承知していた。
「会社」が出て来るからである。
「プロジェクトを始めるためには、まず会社とあなたが楽曲の権利に関して契約書を交わさなきゃならないの」
と彼女は言う。
聞けば会社は、このアルバムは通常の商業的なアルバムではないので、他の投資会社も巻き込んで日本円で数千万円の投資をすると言う。
日本とは全く違う権利ビジネスを歩んでいる中国音楽界であるが、
もう昔のように「歌ってよ、いいわ」で済むような世界は遠い遠い昔の話である。
契約書の雛形が送られて来て、それを布衣のマネージャーに見せたのが悪かった・・・
彼女が内容を見て激怒したのである。
「何よこの契約書!!あんたに全く不利じゃない!!」
広い中国には私を本当に愛している人がたくさんいる。
音楽ビジネスの深い仲間であるLuanShuやLaoLuanが見たらもっと激怒するだろう。
今の中国では、このアルバムが万が一売れたとすると、
日本でJASRACなどからの分配よりももっと多額の金が入って来るのだ。
「末吉が損をする」・・・これは私を愛する全ての人が忌み嫌う、一番あってはならないことなのだから・・・
でもね、「金は要らん」と言うとるんやからそれでええんとちゃうん?
権利商売はその後にあるのよ・・・
私も人から「損」だと見られることでも、結局は「恩返し」を受けて今があるし、
そもそも「契約」っつうこと自体が会社に損になることは書くわけはないのだから「そういうもの」である。
昔はよかった・・・とか言っても、
昔にもし「これしたげるから必ずこれしてね」みたいな契約書を交わさねばならなかったとしたら今の私はないだろう・・・
というわけで私はここから「板挟み」で胃が痛くなるような毎日が始まる。
ついには当の本人の李慧珍に泣きついた・・・(涙)
「心配しないで、私はあんたのこと愛してんだからあんたに悪いようにするわけないでしょ」
いや、そりゃそうなんだけど、これは俺とお前の話じゃなく会社の問題なんですけど・・・(>_<)
愛されるものの辛さである・・・
何じゃかんじゃで基本この内容で布衣んとこの弁護士に契約書をまとめてもらい、
あとは会社と私が双方で署名捺印、それでこのプロジェクトは晴れて動き出すことが出来る・・・
でもアジア諸国を放浪してるのにどうやって契約締結?・・・(笑)
最初はベトナムから一度北京に帰ろうと思ってたのだが、ビザの関係で出国出来ず(>_<)
カンボジアに郵送してもらおうと思ったが契約書送るには郵便事情が不安・・・
その後結局、大元の日本語版のタイトルを書き入れねばならなくなったので、
契約書をメールで送って来るのでそれに書き入れて、
それを印字して先に私が署名捺印して北京に送り返すことになった。
そういう作業なら1泊5ドルのバックパッカー宿でやるよりは、Wingさんが取ってくれる香港の高級ホテルがよかろう・・・
というわけでホテルで印字!!
そして署名して捺印!!・・・って朱肉がないやん(>_<)
朱肉を買いに行くところから始めて署名捺印!!
別に印鑑は持ち歩いてるけど拇印がいいんですと・・・
そりゃそうやろなぁ・・・日本ぐらいやろなぁ印鑑がこれほどまでに万能な国・・・
そして割印!!
これであとは北京に送り返すだけである!!
香港でよかった(涙)・・・カンボジアやったらどないなってたことやら・・・(笑)
はてさて賽は投げられた・・・このプロジェクト、どうなりますことやら・・・