2018/12/26
JASRACさん、こんな高飛車な仕事やってたら本当に告訴しますよ
念願の夢だった純Jazzのアルバムがリリースされた!!
(CDはこちらで予約開始、ダウンロード販売はこちらで今日から開始)
実はこれに関してJASRACと揉めたのが、1曲目に収録されている「The Door to 7th Heaven」という曲。
この曲はもともと中国で発売された私のソロアルバム「亜州鼓魂」の中に収録されている「天界への7番目の扉」という「組曲」の一部である。
私の尊敬するピアニストと、管弦楽のアレンジの師匠、つまり私の二人の偉大なる師匠との共作で作り上げた壮大な組曲・・・
ところが今回のJASRACとの裁判の中で、自分が演奏したこれらの曲に対してもJASRACが「著作権侵害」と裁判所に提出したことによりこの問題が始まる。
JASRACの言い分はこうだ。
「お前はJASRACにこの曲の権利を譲渡してるのだ。お前の曲ではない。この曲はJASRACの曲だ」
裁判が終わって私は、私ひとりが権利を持つ曲の全てをJASRACから引き上げる作業をしている。
だってこの曲は「私の曲」なのだから・・・そんな組織に預けるなんてもっての外だ!!
ところがこの楽曲に関しては引き上げられないと突きつけられた。
何故なら共作者のひとりが「JASRAC会員」であるからだ。
この「JASRAC会員」という契約は、私なんかは大昔に
「そうすれば得だよ」
と事務所の人かなんかに言われたそうしたような記憶がうっすらとある。
当時はJASRACが独占で、他に選択肢がなかったので別に気にしてなかったが、
今となってはこれはとんでもない契約内容である。
なにせ
「あなたが書いた曲は、その書いた瞬間から未来永劫JASRACのものですよ」
という内容なのだから・・・
私なんかは、自分の未発表曲を演奏しただけでJASRACに「著作権侵害」だと裁判所に提出された。
未発表であろうが、この契約があるのだから書いた瞬間にJASRACのものであるというとんでもない理屈だ。
私自身はもうこんなクソみたいな契約はその後解除したが、
まだ数万人の音楽家たちが知ってか知らずか(きっとこんなことまでは知らないであろう)このようなご無体な契約を結んでいる。
今回問題になったのは、共作者であるお二人の師匠のうちおひとりが「JASRAC会員」であったので、JASRACから引き上げるなんてことはもっての外だというわけだ。
何故ながらこの曲は「お前の曲ではない、JASRACの曲」なのだから・・・
しかし私はこの楽曲を演奏してJASRACから「著作権侵害」と突きつけられた時に考えた。
もし私がお二人の師匠の作った部分を演奏してたとしたら、それはお二人の権利を侵害したことになるかも知れない。
でも私はこの「組曲」の自分が作った部分だけを演奏しているので、決して師匠お二人の権利を侵害しているわけではない。
そして今回の収録曲は「組曲」ではない。
自分の作った部分だけを演奏しているのに、JASRACは3人に印税を分配するぞと言っているのが現実なのである。
要は「組曲」なのに「一曲」のように登録しているから問題が起きるのだ。
「組曲」と言えば、有名どころではピンク・フロイドの「Shine On You Crazy Diamond」という曲は下記のように一曲が別々の曲のようにJASRACに登録されている。
イントロ1 (Pert1として別曲として登録) 作品ID:0S1-9536-4
イントロ2 (Pert2として別曲として登録) 作品ID:0S2-0134-8
イントロ3 (Pert3として別曲として登録) 作品ID:0S2-0135-6
テーマ部分 (Pert4という別曲として登録) 作品ID:0S2-0136-4
歌~エンディング (Pert5として別曲として登録) 作品ID:0S2-0137-2
(各パートがイントロなのかテーマなのか等はこのウィキペディアを参照にしました)
弁護士に相談してみたところ、
著作権法上、楽曲が
① 共同で創作され
② 分離利用が不可能
であれば、一体不可分な「共同著作物」と扱われます。(2条1項12号)
これに対し、楽曲が上記①と②のどちらかでも満たさない場合には、それぞれの部分が独立の著作物になります。
つまり、3個のパートが別々に創作されていたり(上記①)、3個のパートが分離利用可能だったりすれば(上記②)、それは単に独立の3個の著作物が集まっているだけ(集合著作物)と判断されます。
ということなので、私(と共作者による)の「天界への7番目の扉」という「組曲」の場合、分離利用可能(②)であり、それぞれの部分の作曲者は下記の通りである。
0~4:00:7拍子部分(ファンキー末吉作)
4:01~8:00:オーケストラ組曲部分(お二人の師匠作)
8:01~11:02:7拍子部分(ファンキー末吉作)
「分離可能」も何も、途中でテープ(当時はアナログ録音)を止めて録り直してるので、この部分には唯一空間があり、物理的に「分離」している。
それに対して、ピンク・フロイドの「Shine On You Crazy Diamond」なんか隙間もなければウィキペディア見なければどこが曲の変わり目かもわからない「分離不可能」であるのにJASRACは「組曲」として登録を受理している。
要は私は「天界への7番目の扉」をこの「Shine On You Crazy Diamond」のように「組曲」に登録し直したいわけである。
「分離不可能」なピンク・フロイドの曲をこうしてちゃんと分離して登録しているのだから、明らかに「分離可能」なこの「組曲」をこのように登録することが出来ないわけがない!!
上記3つの部分をそれぞれピンク・フロイドのように
天界への7番目の扉Part1
天界への7番目の扉Part2
天界への7番目の扉Part3
という別々の曲として登録して、今回のJazzアルバムには「Part1」を収録ということにすればよい
・・・と言うか、もともとそうするべきだったのだ。
それをしていなかったがために裁判であんな酷い目に合わされたわけだ。
まあここまで理論武装していれば大丈夫だろう・・・と、
これが音楽業界のややこしいところなのであるが、JASRACではなく権利をお預けしている出版社を通してJASRACにお願いすることになる。
ところがその出版社に対してJASRACが送った返事は・・・「NO!!」!(◎_◎;)
もうね、想像するに慇懃無礼にNOと言う彼らの語り口調が思い起こされて来てカチンと来たが、私が怒っては間に立っている出版社の人が困るわけだから、このシステム、JASRACにとっては非常にうまく作ってやがると思うしかない・・・
グッと堪えて出版社と温和に(出版社に何の罪もないので温和にするしかない(涙))話し合い、
結局、今回このJazzアルバムに登録する曲を「別名登録」することしかなかろうという結論に達した。
出版社の返信によると、
「天界への7番目の扉」の一部であるファンキー様作曲部分を、「子曲」として別曲扱いで届出する形での変更を受け付けるかという点については、検討の余地はあるとのこと
だそうで、「検討の余地はある」という言い方に非常にカチンと来るけれども、
ここで怒ったら間に立っている出版社の方に迷惑をかけてしまうのでじっと我慢する。
更にはこのような条件も突きつけられる。
・共作者の同意書等をご提出する必要がある
まあこれは共作なのだから当たり前である。
既に師匠お二人には承諾を取ってある。
・同じ出版社が管理をすることが前提
(※親曲と子曲で別の事業部が管理するというのは不可、とのことです)
まあ、本当はJASRAC管理楽曲から外したいのだが、他の楽曲も無理言って外させて頂いている手前、揉めに揉めたこの楽曲をそのままこの出版社にお預けすることはやぶさかではない。
ところが最後の一文にまたカチンと来た。
・子曲には「天界への7番目の扉Part1」というよりは使用者も明確に別曲であることが
判断できるような別のタイトルをつけて欲しい
JASRACにはもっと紛らわしい名前の曲がいっぱいあって、
それを間違わないようにちゃんと分配するのがJASRACの仕事じゃろ!!
そもそも別曲ではなく「子曲」にしろと言いながら、
「似たタイトルは認めん!!別のタイトルにしろ!!」
というのは全く道理が通らんじゃろ!!
だいたいJASRACという会社は何の「音楽的」な仕事をしているわけではない。
タイトルと作詞作曲家でデータベースを作ってそれに照らし合わせて徴収と分配(この部分は相変わらず不透明なのだが)をしている会社でしかない。
例えて言うと、ドメインを管理している会社が、
「このドメインは既に使われてますので」
と言うならわかるが、
「似たドメインにしないで下さい」
などという権利があるか?!!
まあいい、私が怒れば間に立っている出版社の方が困るのだ・・・
腸が煮えくり返りながら別名を色々考える・・・
実はこの「天界への7番目の扉」というタイトルには大きな「意味」がある。
アルバム「亜州鼓魂」の中では、次に続く黄家駒への追悼曲、それにたどり着くまでに7つの扉があり、それを「7拍子」とかけてこの組曲にしているのだ。
当時、日本ではロックのイメージが強すぎて、誰からも興味を持ってもらえないJazz活動を、黄家駒がそのライブを見に来てこう言った。
「凄いよ!全くもって凄い!!毎月やってるのか?次も絶対に見に来るから!!毎回必ず見に来る!!」
それが黄家駒が私にかけた最後の言葉となった。
Jazzとかを演奏していると、時々トリップして自動書記のように勝手に身体が動いている状態になる時がある。
まるで真っ白な世界を漂っているようなそんな状態である。
そう、黄家駒が死んだ時にWingが卒倒して私の腕の中に倒れ込んで来て、
うわごとのようにこんなことを言っていた。
「は、は、は、あいつはさぁ・・・今、真っ白なところにいるんだよ。
とても気持ちいいんだって、酒飲むよりもセックスするよりももっと気持ちいいってさ、は、は、は」
私は「その世界はある」と思った。
それは私たちプレイヤーが「偶然」物凄い演奏をした時に訪れるあの「真っ白な世界」と同じなんだ、と。
そして私がその世界に続く扉を開ける度に、黄家駒は最後の扉のところにいて私の演奏を聞いている。
そう、あの日の「約束」通り・・・
だから「天界への7番目の扉」なのだ。
その名前を変えろとは・・・(怒)
いかんいかん、怒れば間に立っている出版社の人が困る・・・
だから頑張って我慢して別タイトルを考えた。
第一希望:The Door to 7th Heaven(カタカナ表記:ザドアトゥーセブンスヘブン)
「天界への7番目の扉」とは全く違うタイトルです。
第二希望:The Door to Seventh Heaven(カタカナ表記:ザドアトゥーセブンスヘブン)
それでも紛らわしいというなら表記を変えます。
第三希望:7th Door To Heaven(カタカナ表記:セブンスドアトゥーヘブン)
これは「天界への7番目の扉」の英語表記として登録されているので却下されるかも知れません。
(どうしてこの団体が曲名を却下する権利があるのか?!!(怒))
第四希望:7th Heaven(カタカナ表記:セブンスヘブン)
譲歩もここまでだと思います。
Seventh Heavenというのは有名な慣用句で、これを使った曲タイトルは無数にあります。
(代表的なのはマイルスデイビスのSeven Steps to Heaven)
ちなみに「7th Heaven」も私のやってるバンド「X.Y.Z.→A」の曲名でもありアルバムタイトルでもあります。
というメールを送ったところで怒りは「沸点」に達した。
このような歌詞のないインストナンバーでは「タイトル」がすなわち「歌詞」と同じ意味を持つ。
それを「紛らわしいから」という理由で「この歌詞にはするな」とは、この人たちは一体何様だと思っているのだ!!(怒)
ついつい怒りに任せて次のような一文を出版社に送りつけてしまった。
「Seventh Heaven」というのは「天にも昇るような喜びの極致」という意味で、そこに入るドアということは「天界への7番目の扉」というのとは全く違った意味となります。
(天にも昇るような喜びの極致に入る1番目の扉ということになります)
ご指定の通り「全く違うタイトル」をつけておりますので。
それでも「変えろ」と言うのならここまで譲歩しますので、これで却下するようでしたら担当者の名前を教えて下さい。
訴訟します。
この「訴訟します」というのが聞いたのだろう。
JASRAC内部で
「あの人は本当に訴訟したりする人ですか?」
「いやあれは絶対にするだろう」
になったに違いない、しばらくしてから返事が来た。
別曲の方についても、「天界への7番目の扉」と同様、全支分権についてJASRACに預ける
という点が前提となるのですが、
そのような取り扱いで問題なければ、別曲の方のタイトルについて、ご希望通りの「天界
への7番目の扉Part1」というタイトルのままで問題ございません、とのご連絡をいただき
ました。
また親曲・子曲としてではなく、別曲としての取り扱いで可能とのことです。
激怒!!!
お前は一体いつの話を言っているのだ!!
お前らが「変えろ」と言うからスタッフと一晩がかりで考えて「The Door to 7th Heaven」にしたのだ。
また前に戻せと言うのか!!お前らは最新のメールを見とらんのか!!
怒ったらあかん怒ったらあかん。
怒ったら間に立っている出版社の人に迷惑をかける。
気を取り直して出版社の人にメールを送る・・・
すみません、そちらを振り回してしまうことになりますが、
元々JASRACが「天界への7番目の扉Part1」を却下したことにより大きく振り回されて、
また二転三転の後に元に戻ったことによりまた振り回されてしまったという現実があります。
自分が「変えろ」言っておきながら、結局待たされて「やっぱこれにしろ」と言われてもちょっと身勝手過ぎる感がありませんか。
出来ますれば、もう苦渋を飲んで「The Door to 7th Heaven」に決めた、という状況もありますので「The Door to 7th Heaven」で登録したいのですが・・・
ということで「こちらがお願いして」なんとかこのタイトルに「して頂いた」。
しかし今となってはこのタイトル、結構気に入っている。
「天界への7番目の扉」は前述のような「意味」があるのだが、
このタイトルの場合、もう6つの扉を開けて「7th Heaven」、
つまり黄家駒のいるあの世界に続く最後のドアのところにいるような意味合いがある。
黄家駒は天界でこの演奏を聞いてどう思ってくれるだろうか。
「凄いよ!全くもって凄い!!次も絶対に見に来てやるぜ!!」
とまた言ってくれるのか、それとも
「まだまだな」
と最後の扉を開けてくれないのか・・・
まだまだ6つ目の扉まで来てないかも知れないし、
7つ目なんかまだまだ開けられるものじゃないかも知れないが、
こうしてここまで来た!!
ここで扉が開かなければまたもの凄い演奏をして開けてやる!!
今は「ここまで来た!!」・・・それがJazzである。
戦いは一生続くのである。
配信サイトでは試聴が出来たりするので、
ちらっと聞いてもしよかったら末吉の戦い・・・
こんなアホみたいな組織との戦いではなく、天界へと昇るための戦い・・・
に耳を傾けて頂ければ幸いである。