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2009年10月24日

重慶ですなあ・・・

ワシ:重慶ですなぁ・・・
BeiBei:重慶ですねぇ・・・
ワシ:君はもう得意中の得意じゃろ。
BeiBei:何せもう4回も来ましたからねぇ・・・
ワシ:4回も来たんかい?!!
BeiBei:足掛け3ヶ月もやってましたから・・・あなたの仕事・・・
ワシ:そうかぁ・・・3ヶ月もやってたかぁ・・・
BeiBei:雑疑団の団長さんが言ってましたよ、ファンキーさんは何で来ないんだって・・・
ワシ:・・・(そんな仕事やってられんじゃろ・・・)
BeiBei:何せ最初に一回来ただけですぐに逃げちゃいましたからねえ・・・
ワシ:ビール飲むか?ビール?・・・
BeiBei:今からプロモーションですけどファンキーさんはサウンドチェックまで寝れるんでしょ、だったら付き合いすよ。
ワシ:まあ飲め飲め!!
BeiBei:だいたいあの団長の言うことっていつもよくわからんのですよ。
ワシ:そやなぁ・・・「もっと優美に」とか言われてもなあ・・・
BeiBei:ある時なんてシンバルが要らないって・・・
ワシ:シンバル消しちゃいなさい!
BeiBei:シンバルを消したら今度はスネアが要らないって・・・
ワシ:スネアも消しなさい!!
BeiBei:そしたら今度はバスドラも要らないって・・・
ワシ:バスドラも消しなさい!!
BeiBei:そしたらリズムがないから迫力がないって・・・
ワシ:全部やり直しなさい!!
BeiBei:いきなり電話があって構成が変わったからすぐ重慶に来いって・・・
ワシ:来なさい!!来なさい!!
BeiBei:いやー・・・大変でしたよ・・・
ワシ:そうかぁ・・・飲め飲め!!四川料理食え食え!!
BeiBei:僕・・・プロモーションなんでもう行きます。
ワシ:そうかぁ・・・じゃあ俺は残りの食っとくわ・・・ホテルで風呂入ってサウンドチェックまで寝とくから起こしてね。
BeiBei:はい、じゃあ行って来ます。
ワシ:いってらっしゃーい!!

Posted by ファンキー末吉 at:13:45 | 固定リンク

2009年1月 5日

重慶雑技団ふたたび

重慶雑技団の音楽をやってグランプリを取ったということで、
やはりというか、当然のごとく恐れていたことが起こった。

「ファンキーさん、我が重慶雑技団はアメリカで公演を行うんですが、
その音楽も是非!!」

何度も言うが、ワシは基本的にこのテの仕事を好きでやってるわけではない。
まあ自分のバンドのためには何でもやるが、
作曲でもアレンジでもプロデュースでも、
ドラム以外の仕事は自分のバンド以外では基本的に「人助け」である。

まあ世の中往々にしてそっちの方が大きく評価されたりして、
本職よりも仕事が多くなったりする。
まあそこで多くのミュージシャンは商売替えしてそっちを本職にしたりするが、
ワシとしては・・・

本末転倒になるとドラムがヘタになるからイヤなのよん!!

というわけでデブのキーボードにまた、
「ワシは子育てに忙しいからお前やれ!!」
と言うとまた泣きが入った。

「あの人たち、今度は演目のプログラム送りつけて来て、
全曲やってくれって言うんですぅ・・・。
とてもじゃないけど無理ですぅ・・・。」

ひとつの仕事が大成功して評価されると、
通常はその値段は飛躍的に高くなり、労力は下がるのが常だが、
ここ中国では往々にして逆になる場合もある。

「全部で8曲、しかもギャラは前回より安いですぅ・・・」

しかしいいこともひとつだけある。
今回は旧正月までに全ての仕事を納めてくれと言うのである。

「よっしゃ!!引き受けた!!」

な、な、なんでですか・・・
びっくりするデブ。
なだめるワシ。

「あのな、前回の仕事みたいに締め切りまで時間がたっぷりあるとな、
ああいう人たちは満足するまで何回でも直しを要求するだろ。
考えてもみぃ。結局お前が苦労して直した部分、
結局最終的には最初のDEMOと同じになっちゃっただろ。
しょせんは最初を超えられないのよ。
時間がないぶん、直しを入れられないので今回の仕事は逆に楽だ!!」

断言するワシ。
不安がるデブ。

「ほなよろしく!!」
でぶっちしようとしたらデブが泣くのでやっぱワシも一緒にやることにした。
おせち食いながら、
「ほな4日に北京帰るから1週間で全部やろうな」
デブにお気楽にメールするワシであった。

Posted by ファンキー末吉 at:10:44 | 固定リンク

2008年12月 9日

とっても嬉しかったこと

零下の北京を避けて八王子で子育てに専念している今日この頃、
北京からとっても嬉しいニュースが飛び込んで来た。

なんと、私が音楽を担当した重慶雑技団が全国大会でグランプリを取ったらしい!!

いやー・・・嬉しかった!!
わけもなく涙が出て来た。

11月中旬が大会だったのじゃが、
ずーっと何の音沙汰もなかったので「こりゃ落選したな」と思っていた。

まあこちらとしては「仕事」としてやっているわけだから、
向こうが満足してギャラ払ってくれればそれで「仕事」は終わりである。
別にそれでコンテストに落選しようがワシには関係ない。

しかし・・・

あのスーパー子供たち・・・
毎日毎日あの苦しい練習をして来たあのスーパー子供たちのことを考えると・・・
やっぱ何らかの「結果」を形として残してやりたい。

例え数回しか会ったことがなくても、
例え今後一生会うことがないにしても、
ワシは確かにあの子たちの人生の一部(実は大部分)をこの胸で受け止めて、
それを「音楽」という形にして返してあげた。

「仕事」としてはこれまでである。
しかしずーっと「何か」が心にずーっとひっかかっていた。

ひぐっつぁんが死んでまだそう日がたってないが、
おっさんが偉大なドラマーであったことは世界中が認めている。
ワシもおっさんの精神を受け継いで、
今後もおっさんの残した偉大なる楽曲を演奏してゆく所存である。

しかしあのスーパー子供たちはどうだ?!
小さい頃から一生を雑技に捧げ、
その大部分は世に一切認められずに死んでゆくのだ。

いや、音楽の世界とてそうである。
どんな世界でも、その人の一生が認められずに死んでゆく方が多いのじゃ。

しかし一瞬たりと言えどもワシはあのスーパー子供たちと一緒にいた。
音楽で出来ることなんてほんの小さなことである。
この曲を聞いて涙を流す人はおそらくいない。
でもこの音楽と共に演技をしているこのスーパー子供たちを見て、
おそらく大多数の人が涙した。

だからグランプリを取った。

たかが賞である。
しかし彼らにとっては「優勝」こそが「全て」であった。

そのためにあのスーパー子供たちがどんな毎日を送っていたか、
そんなことはちょっとでもその演技を見れば容易に分かる。
「勝負は時の運」と言うけれども、
少なくとも彼らはそんなところで生きていたのではなかった。

そんな彼らの一生の中で、
ほんの少しでもワシの音楽によって花を添える手伝いが出来たことが非常に嬉しいのじゃ。

(コンテストの時の写真、動画も是非入手したい)

ChongQingPhoto1.jpg

ChongQingPhoto2.jpg

ChongQingPhoto3.jpg


あの時、副団長はワシに言った。
「雑技界に革命を起こしたいんだ!」
少しはお手伝いが出来たことが嬉しい。

そしてこう言った。
「グランプリなんかとったらファンキーさんも雑技界音楽界からひっぱりだこですよ」

それだけは避けたい!!

しんどいのよ・・・このテの仕事・・・
ワシはやっぱドラム叩いてビール飲んで暮らしたい。

Posted by ファンキー末吉 at:09:20 | 固定リンク

2008年10月27日

重慶雑技団大詰め

高知の母に預けてたふたりの子供が八王子に引っ越して来て、
若い身空でいきなり三児の母になってしまった嫁も心配だし、
真ん中の子が風邪をひいたとも言うので、
二泊三日の強行スケジュールで日本に帰って来たのがいけなかった。

だいたい移動だというと前の日寝ずに仕事をし、
そのまま空港に行って飛行機に乗る。
二泊三日では初日と帰る日は寝ないということになるので大変である。

最終日は3時に起きて仕事をしていた。
2時間もあれば余裕だと思ってのんびりやってたら、
「パパぁ!何やってんの?!もう5時よ!!」
と嫁が血相変えてスタジオに飛び込んで来る。

まだ4時やけど・・・

「それ北京の時間とちゃうん!!!」
二泊三日なのでパソコンの時間を北京時間のまま変えてなかったのだ。

これ・・・時差ボケと言う・・・

始発の飛行機に乗るには八王子からだと5時に出ないと間に合わない。
嫁が車を出してくれてばたばたと車を出してくれて何とか間に合った。

北京空港で国内線に乗り換えて重慶へ・・・
と思ったら何故かずーっと頭痛がしているので、
「酒を飲んだら直るじゃろう」
と空港のタイ料理屋でビールを飲んだら痛くて動けなくなった。

「張張(ジャンジャン)!助けに来てくれぃ!!」
一緒に重慶に行くデブのキーボードを電話で呼び出して救いを求める。

太った体で駆けつけて来た張張(ジャンジャン)!に医務室に連れて行かれる。
「最近寝てないとか休んでないとか、疲れてませんか?」
医者にそう言われて「もっともだ」とばかり薬をもらう。

「ほな、そういうわけでワシは病気なんで君ひとりで行って来なさい」

デブのキーボードは泣きそうな顔で首を横に振る。
「ボク・・・大変だったんですから・・・
あの人たち・・・わけのわからないことばっか言って・・・
何回直しても満足してくれなくて・・・
最後にはイルカの鳴き声で歌を入れてくれって・・・
一緒に行ってくれなきゃ・・・ボク・・・泣いちゃいます・・・」

まあ音楽をまるで解さない人たちからの発注なので当初からいろいろあった。

「メロディーをもっと優美にしてくれませんか」
優美?・・・・うーむ・・・
「この部分をもう少し怪意にしてくれませんか」
怪意?・・・うーむ・・・

あんましよくわからんので「後は頼む」とデブのキーボードに投げ出していたのじゃ。
彼らもワシには少し遠慮するのかこの程度だったが・・・
そうか・・・イルカの鳴き声までいったか・・・

仕方がないので医者からもらった頭痛薬を飲んで飛行機に飛び乗る。
飛行機に揺られること2時間弱。
日本から北京までやって来て、
またその道のりの半分を引き返すようなもんである。

ChongQingStreetTable.JPG
(重慶のレストラン街の道路にある素敵なテーブル)

久しぶりの雑技団の練習場。
コンテストまであと1か月ということで、
練習にもかなり気合が入っている。

最終的に決定した演技をみせてもらったが、
さすがにアクロバット度がかなりUPしていた。

ChongQingAcrobat1.JPG
(演技する台から飛び降りた少女を空中に放り投げて回転させて受け止める)

ChongQingAcrobat2.JPG
(3人で片手倒立をし、もう片手同士を合わせた上で少女が片手倒立する)

人間業かい!!!

一流のスポーツマン、芸術家はどうしてあんなに凄いのかというのを語った人がいる。
彼らの毎日の生活がもう普通の人と違うのだ、と。
人が普通の生活をしている時に違う生活をしているから違うのだ、と。
つまり芸術とは「生き様」だ、と。

ワシにはこの子たちがこの数カ月どんな生活をして来たかがわかる。
もう夜の11時。でも子供たちは練習をしている。
明日は朝の9時集合。でも子供たちはもう練習をしているだろう。

生き様・・・というか・・・「人生」である。

演目が入れ替わったり長さが変更になったりしているので、
それに合わせて曲のサイズも変更する。

「張張(ジャンジャン)くん!まずAメロを半分に削りなさい!
間奏も8小節削りなさい!
少女が台から飛び降りる時には何か効果音を入れなさい!」

デブのキーボード大忙しである。

ChongQingZhangZhangEdit.JPG

かくして曲のエディットが終わり、
それに合わせてもう一度演技をしてもらう。
もう夜中の12時である。

後は翌朝に雑技団の団長に聞いてもらうことにしてとりあえずこの日は終了。
翌日の団長は更に演技を少し変更し、
それに合わせてまた少しサイズを変えてとりあえず楽曲にはOKが・・・

と思ったらまた
「間奏の部分をもう少し怪意に・・・」

もう既に怪意です!!

まあ怪意っつう中国語の意味もよくわかっとらんのじゃが、
ここがやっとワシの出番である。
ヘタな中国語と理詰めで団長を説得してやっとOKが出た。

やっと終わった・・・
ChongQingZhangZhangBeer.JPG

解放されて地ビールを飲む張張(ジャンジャン)。
デブよ、お前はまだわかってない!
トラックダウンでまた山ほど直しが来るであろうことを・・・

・・・というわけでワシは明日の仕事終わったら日本帰るし・・・
後は任せた!!

Posted by ファンキー末吉 at:08:11 | 固定リンク

2008年7月14日

重慶雑技団その2

また重慶にやって来た。

ChongQingShanChengBeer.jpg


何も鶏肉よりも多い唐辛子と一緒に揚げた重慶名物のスパイシーフライドチキン
「重慶辣子鶏(写真右)」を食べに来たわけでも、
血の煮こごりをラー油で煮詰めた「毛血旺(写真左)」を食べに来たわけでも、
前回飲めなかった別種類の地ビール(写真中央)を飲みに来たわけでもない。
重慶雑技団の音楽である。

ChongQingZaJiTuan2.jpg


7月19日から夏休みいっぱいは
オリンピックをボイコットして日本に帰ると決めてから、
よくある話でいろんなプロジェクトがこの時期に集中する。
「こりゃ絶対に終わらんぞ」
と1週間ずーっと頭を抱えて悩んでいた。

「悩んでる暇あったら仕事したら?」
と人に言われてハタと気がついた。
そやなあ・・・ほなやっぱ重慶雑技団から着手しよう・・・

何故か?
テレビドラマ音楽はミーティングで初対面の監督と会って、
10分話してから「仕事」として開始したが
(厳密には悩んでいただけなのでまだ着手してないが・・・)
重慶雑技団の副団長と演技指導の兄ちゃんとは地ビールを飲んで語り合い、
そして何より超絶技巧を繰り広げる子供たちとはもう半日一緒にいた。

もう「友達」である。

「雑技界に革命を起こしたい」と言う彼らのために、
そして何よりも、物心ついてから毎日毎日練習に明け暮れ、
そしてその人生をずーっとそうやって生きていくであろうこの子達のために、
やっぱ頑張って何かしてやらなあかんのちゃうん!


というわけで、張張(ZhangZhang)というデブのキーボードに、
「ドラマ音楽はお前がせえ!」
と言いつけて自分だけで重慶に来るはずじゃったが、
でもやっぱこっちも結構手間がかかるので
「これも手伝え!」
というわけで連れて来た。

ZhangZhang.jpg


前回来た時に録画した彼らの演技に一応音楽はつけて来た。
一週間ぐらいは徹夜する覚悟だったが、
2日ぐらいで出来たのでラッキーである。
これも映画音楽たくさんやってるからデータが豊富だったおかげである。

考えてみればこれも映画音楽の一種だと思えばよい。
演技に音をつけて、
それがぴったりシンクロすれば見た人をもっと感動させられる。
映像だけでも、音楽だけでも
単独では決して与えられない感動が得られる総合芸術なのである。

音楽だけ送ってもどんな感じかわからないだろうから、
わざわざその映像を編集してそれに音楽をつけてネットで送りつけた。
「このように演技してね」というDEMOである。
雑技団は大喜びでその音楽に合わせて子供達に練習させ、
その映像をネットで送ってくる。

「ぜんぜん音楽に合うてないやん!!!」

リズム感もへったくれもない。
早い話、音楽を全然聞いていないのである。
せっかく動きに合わせて入れた音とはずれてるし、
クライマックスの大演技なんぞ何小節もずれてしまっている。


そう言えば数年前、
日本のオリンピック協会に呼ばれて「選手達のリズム指導」に行ったことがある。
シンクロナイズドスイミングやスケート等、
音楽に合わす4種目の競技の点数を上げるために、
やはりリズム感はリズムのプロに、
表情はプロの女優に教わるべきだ、
ということで呼ばれたのである。

ワシを呼んだ担当者は熱っぽく語る。
「だいたいワシらスポーツ関係の人間なんて脳みそが筋肉なんですから、
音楽なんてわかるわけがない!!
その選手に音楽を教えてる人間っつうのが
またこれがリズム感のかけらもない人間で、
それが一生懸命タンバリン持って選手に教えてるんですから、
選手のリズム感なんかが育つわけがない!!
これがスポーツ界の現実ですよ。
全世界のスポーツ界がそうやって選手を育ててるんですよ。
音楽はプロに教わりましょうよ、
そんなことを世界中のオリンピック委員会はいまだに気づいてないんですよ」

そうなのじゃ。
それが本当だとしたら、あの雑技団の人たち・・・
そりゃ雑技にかけてはもの凄いかも知れんが、
彼らが子供達に教えてる限り、
そりゃどれだけ練習しても演技が音楽に合うわけがない。


というわけで重慶にやって来た。
子供達の練習に参加する。
先生達が演技に合わせて手拍子で指導をしている・・・

その手拍子がそもそもリズムとずれてるやん!!!

無理もない。
彼らは物心ついたときからずーっと雑技界にいる。
カラオケで歌を歌いに行くこともなければ、
悲しい時つらい時に音楽を聞いて救われるわけでもない。
どれだけ苦しくても全てを「練習」で乗り越えてゆくのである。
ある意味オリンピック選手よりもストイックであると言えよう。

また、雑技の世界には基本的に音楽という概念はない。
いや、純然たる雑技音楽と言えばは逆に民族楽団による生演奏である。
楽隊の方が演技を見ながらぴったりそれに合わせるのである。
まあ京劇なんかと一緒ですな。

つまり彼らは自分からリズムや音楽に合わせてやることなどないのである。
ところが現代音楽を全部生バンドでやるわけにはいかない。
かと言って音楽と合わなければ
適当に音楽かけて演技している現状の雑技界と同じである。
日本のオリンピック委員会がワシを呼んだように、
中国雑技界(大きく出たなあ)がワシを呼んだのは、
この永遠の命題を乗り越えるためなのである。


とりあえず作ったDEMOに合わせて一度演技してもらう。
小さな合わないところは無視して、
まずは構成をビシッと決めて、全てはそれからである。

「音楽的にはこの部分はこの長さが必要なので、
どっかひとつの動作を繰り返しでもしてこの部分を少し長くしてもらえませんか」

映画ならちょっと編集を変えればよい。
踊りなら振り付けをちょっと変えればよい。
しかし雑技団は首を横に振る。

そもそもが人間技を超えた超絶なのだから、
それを素人意見でちょこっと変えたりするのは難しいのである。

「ほな小節数をこちらで調整してみよう」
デブのキーボードと一緒にデータの切り貼りをする。
そしてもう一度それに合わせてやってもらうと、

「今度はまた長さが違うやん!!!」

そもそも片手で倒立して回転したりする高難度の演技というのは、
それが流れるようにゆっくりに見えてても非常に体力が要るのである。
息を整えたり、大技の後にバランスを整え直したり、
いろんな要素で技が遅れたりする。

「お前、子供達にもっとリズムに合わすように言え!」
デブのキーボードにそう命じるが、
「僕・・・そんなこと・・・よう言えません・・・」

そりゃそうじゃ。
ワシかて自分でよう言えんからお前に言わせようとしとるんやないかい!!!


そもそも子供達はその演技自体が人間技を超えた超絶なのだから、
更にそれを音楽に合わせろということ自体が無理なのではないか・・・
暗礁に乗り上げた。

そしてしばらく呆然と子供達の演技を見ながら
ふとちょっとした疑問が湧き出て来た。

「音楽にも合わせらんこの子達は、
どうしてこの子達同士の動作をぴったり合わせることが出来てるんや??・・・」

例えばシンクロナイズドスイミングなどでは、
実は水中でリーダーが合図を送ったり、
音楽とかリズムとかは関係ないもので演技を一体化させていると聞いた。
雑技もそうなんか?・・・

果たしてそうであった。
一番年上の男の子が演技をしながら声を出して、
それに全ての人が合わせて演技をしていたのだ。

「その声を録音せえ!!」
マイクを引っ張って来てその男の子のそばに置いて録音し、
その声をDEMOに入れこんで、それに合わせて練習し、
その声の部分に将来は別の音を入れて、
声ではなくその音に合わせるようにしてゆけば子供達への負担は相当低い。

録音した声をエディットして音楽的に正しい位置に前後させ、
もう一度それに合わせて演技してもらう。
「1、2、3、4」と数えている部分もなるだけリズムに合わせてエディットし、
ゆっくりになるところなどは将来的には二拍三連とかポリリズムのフレーズを入れて処理すればよい。

「大丈夫?やりにくくない?」
子供達に聞いてみる。
少々の前後やテンポの違いは問題ないようだ。
ところが、
「女の子が合図する声が入ってないのでそこが合わない」

女の子も合図してたんや・・・

その声も拾いだしてレベルを上げ、
やっとDEMOが完成した。
彼らは別にもう音楽に合わさなくてもよい。
その声に合わせればよいだけである。
そのうちにその声をどんどん小さくしてゆき、
いつの間にか他の音楽的な音に変わってゆくのじゃが、
そんなことは本人達は知らなくていい。
ワシがうまいことだまくらかしてやろう。


思えばもうすぐオリンピック。
あの時まかり間違えばワシはオリンピック強化メンバーの一人として、
同じ手法でオリンピックの選手のために働いてたかも知れない。

でも日の丸背負って国家プロジェクトをやるより、
なんかこの子達のために、
そして雑技に一生を捧げてるロックな人たちのために何かやってあげられるっつうのがやっぱええがな・・・

世界中にテレビ中継されるわけでもないし、
世間の誰に認められるわけでもないけど、
どうせこの子達は一生そうやって生きていくんや。
優勝ぐらいさせてやりたいがな。


ふと見ると練習場のすみにスローガンが掲げられていた。

MeiYouKuMeiYouQian.jpg


「全国大会まであと112日
堅持こそが勝利だ!!
苦労のないところに銭はない!!
みんな頑張ろう!!」

中国人は直接的やなあ・・・

Posted by ファンキー末吉 at:14:05 | 固定リンク

2008年7月 5日

重慶雑技団その1

何の因果か重慶雑技団の音楽をやることになって重慶に来ている。

ChongQingZaJiTuan.jpg

スーパー子供たちの練習を見ながら考える。
「私は何をする人ぞ」と・・・

それにしても凄い!
この女の子は片手一本で身体をささえながら、
倒立してもう片手と両足で演技をする。
ある時はそのまま片手で倒立しながらくるりと360度ターンをしたり、
そしてある時はその片手でちょんとジャンプをし、手を入れ替える。
まだ練習中だが、最後にはこの手のひらぐらいの大きさの台の上でバク転をすると言う。

・・・神業である・・・

「ここまでやれないと優勝できないのよ」
振り付けの先生が熱くワシに語る。

雑技団の世界には全国コンテストがあり、
そこで優勝した雑技団は国家から多額の援助があるということを、
我々日本人どころか中国人でさえ知っている人は少ない。
世界大会で賞を取れれば援助金はもっと多くなる。

単手倒立(DanShouDaoLi)はスタンダードな演目で、
彼女のようにウルトラCを入れる以外には基本的にみんな同じような演技をする。
オリンピックと同じ、いやオリンピックより神業であると言えよう。

じゃあ何で差別化して点数を稼ぐか。
「音楽だ!」
というわけで、日本にいる雑技団関係の中国人が
「日本にこの人あり!」というわけでワシを探し出した。

・・・北京にいるんですけど・・・

「俺達は雑技界に革命を、いや奇跡を起こしたいんだ」
ワシと連絡を取った副団長が熱く語る。

彼らもここで暮らし、
同じようにアクロバットをしながら過ごして来た。
人生その全てが「練習」である。
今まで音楽はありものしか使ったことのなかったこの世界に、
初めて音と演技がシンクロした雑技を作り上げたいと言うのだ。

「ファンキーさんも流行音楽界、映画界では既に有名ですけど、
今からは雑技界にもその名前が轟くこととなるのです」

・・・別に轟かなくてもいんですけど・・・

はっきし言ってそんなヒマはない。
2週間後の夏休みには日本に帰り、
オリンピックはボイコットして8月いっぱいまで子供たちと八王子にいる予定である。
それまでにアルバム1枚と、
テレビドラマ音楽30週分と、
中国語教材を1冊仕上げねばならない。
(ワシは何をする人なんじゃろ・・・)

テレビドラマの音楽なんて、
まず43分のドラマを30週分見てから着手することとなるので、
見るだけでゆうに1週間かかるではないか・・・

練習を見終わって重慶火鍋を食べに行く。
地ビールを飲む。

ChongQingBeer.jpg

旨い!

気がついたら「やります」と返事していた。
今から北京に戻って1週間で音楽を作ってまたここに帰って来る。
地ビールを飲みに・・・いやいや、彼らの夢をかなえに・・・

Posted by ファンキー末吉 at:08:25 | 固定リンク