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2024年8月25日

世界のどこかにあなたのことが大好きな人がいる

わけあって(何があったかは想像にお任せします)ブログを閉鎖してましたが、ぼちぼち復活していきます。
(過去記事も様子を見ながらぼちぼち復活していきます)

今日のお仕事・・・4万人のドラマーが参加するという中国最大のドラムコンテストの審査員で呼ばれて、この国のスーパー小学生、スーパー幼稚園児の演奏に肝を潰した。

その中にひとりのドレッドヘアーの小さな女の子がいて(後にその子は男の子だと聞いた・・・スマン)、私はその子が一番いいと思ってたが、残念ながら入賞はしなかった。

入賞したのは・・・残念ながら誰が誰だか覚えていない・・・
みんな同じスタイルの手数系で、ヘタしたら叩くフレーズまで全部同じだったのだ。

「どっかにお手本のドラムプレイがあってみんなそれをコピーしたの?」
私は主催者に聞いてみた。

「いや、課題曲はうちが作ったけど、模範演奏は作ってない」

じゃあ誰がこのドラムソロを作ったの?

中国にはそれこそ何千何万のドラム教室がある。
日本は「ピアノやバイオリンは習い事だけどドラムやエレキギターは遊び」みたいな感覚があるけど、中国はどちらも立派な「教育」!!
この現代において、子供達が自由に楽器を選べるとしたらバイオリンを選びますか?(失礼)
ギターは習得するまでに弾き方など演奏法を習得しなければ演奏出来ないけど、幸いドラムはスティックさえ持てば誰でも音は出る。
そんなこんなでドラムを習う子供は日本の数十倍、いやおそらく数百倍多いのだ。

私が行ったことがあるドラム教室で一番大きなものは、生徒が2000人!!!(◎_◎;)

あるドラム教室のチェーン店の「ドラムの先生にドラムを教えに行く」仕事をした時には、その教室は全国に800の分校があると言う・・・
「じゃあここはおそらく中国いちでしょ?」

「いや、中国で4番目だよ」

そんな無数にある全国のドラム教室でドラムを習う子供達の最終目標がこのコンテストである。

そしてここで優勝すれば、そのドラム教室にはまたいっぱいの生徒が集まる。
ドラム教育はこの国では「巨大な産業」なのである。

そんなドラム教室のとある先生が、自分はそんなにドラムを叩けないけど(いいドラマーが必ずしもいい先生とは限らないし、いい先生が必ずしもいいドラマーとは限らないのでそれはどうでも良い)、その先生が一生懸命この32分音符の連打によるドラム譜面を書いた。

そしてそれを・・・売った!!

他の教室の先生達はこぞってそれを買って、子供達はこぞってそれを練習した。
話に聞くと子供達はこの1曲だけを8ヶ月間毎日練習してコンテストに挑む・・・

「これでいい」わけではないが、「これが現実」である。
コンテストの主催者もなんとかこの流れを変えたいと思っているがなかなか難しい。

今回このコンテストに入賞した、いや決勝戦に参加した100人の子供達は、もう全国のどのコンテストに行ったって入賞するのだ。

子供も嬉しい、親も嬉しい、ドラム教室もウハウハ・・・この大きな流れがそう簡単に変わるものではない。

その大きな流れに乗れなかった子供たち・・・私が今回大好きになったドレッドヘアーの子供などは当然ながら落ち込む・・・

だから私はその子に言った!!
「私はあんたのドラムが大好きだ!!今日入賞したどのドラマーよりもあんたのことが大好きだ!!」

私は日本でとても売れているバンドのドラマーだった。
私が暮らしていたその世界は「売れていること」だけが唯一正しい世界だった。
だから私はその世界を後にして中国に逃げて来た。

売れてるバンドがいいバンドなの?
じゃあ売れてないバンドはクソなの?

同様に、
入賞したドラマーがいいドラマーなの?
落選したドラマーはクソなの?

ついでに言おう。
成功して大金持ちになった人間がいい人間なの?
じゃあ貧乏な人間は悪人なの?

世の中なんて、成功する人間よりもしない人間の方がよっぽど多いのだ・・・

「私は(僕は)ルックスが悪いからモテない」と思ってる人たちに言いたい。
モデルみたいな人たちが美人(イケメン)で、他は全部ブスなの?

世界のどこかにあなたのことを一番美しいと思ってあなたを愛する人がきっといる。

同様に、世界のどこかにあなたのドラムが大好きで、そんなドラムを叩くあなたのことがが大好きだと思ってる人がきっといる。

だからあなたは「あなたのドラム」を叩けばいいんだよ!!
私はそんなあなたのことが大好きだ!!!!

このコンテストの入賞者達はある種の「天才」である。
でも「この曲」しか叩けない。

そしてそれは「音楽」ではない。
ある種の「スポーツ」である。

君たちが大人になって、いろんなことを経験して、ある時人生に絶望した時に、ひょっとしたら「音楽」に救われるかも知れない。
その時にやっと君たちは「音楽をやりたい」と思うだろう。

君たちは若い、その時に始めたって全然遅くない。
でもコンテストに落ちたからってドラムをあきらめるなんて全く意味はない!!

あなたはいち早く音楽を始めればいい。
神様はそのチャンスをあなたにくれたんだよ。


爆風スランプが27年ぶりに(年数には諸説あり)新曲を発売した。

ある友達は「Runnerみたいなのを期待してたのに」と言った。
それもそうだろう、Runnerは爆風スランプの代表曲なのだから・・・

でも私はこの曲を作って、この曲を誇りに思う。
こんな曲を一緒にやってくれた仲間を誇りに思う。
Runnerみたいな曲じゃなくてこの曲を発売してくれたレコード会社に感謝する。

日本の皆さんにはあまり理解できないかも知れないけど、中国では私は昔の爆風時代よりも有名になっている。
だから「Funkyが昔やってた暴風楽隊っつのはスゲーらしいぜ」と勝手にそう思われている。

だから私はそんな中国人たちが失望するような作品を出すわけにはいかない。
くだらない曲(Runnnerがそうだと言いたいわけではない)を出すぐらいなら爆風なんかやらない方がいいのだ。

中国では伝説がひとり歩きして、「Funkyはもの凄い大スターだったのにそれを捨てて中国に来た」みたいに思われてるけど、それは半分以上は虚構である(笑)。

ある時期売れてたのは事実だけれども、私は自分の人生で「俺はとっても売れてたバンドのドラマーだったんだぞ」など、そんなことを誇りに思ったことなど一度もない。

でも「口から火を吹き、放尿をし、ステージで脱糞と出産以外全てやった!!」と豪語するバンドのドラマーだったことは誇りに思う。

人生で大切なことなんて、いっ時の名声やあり余るお金なんかじゃない。
「キラキラとした時間」
それさえあれば一生それを抱いて生きてゆける。

もし一度だけ過去に戻れるなら・・・
私は爆風が一番売れてた頃に戻りたいとは思わない。
「こんなバンドが売れるの?」と言われながら、「大きくってすみません号」に乗ってはちゃめちゃやってたあの時代こそが一番「キラキラしてる」時代だった。
私はその頃の自分を誇りに思う。

もし過去に戻れたとしたら、昔の自分にこう言ってやりたい。
「無理して変わらなくたっていんだよ。どこかにきっと今のあなたを大好きな人がいる。その人に向かってだけ音楽をやればいい。その人に向かってだけ自分の一番大切なドラムを叩けばいい」

この子のドラムを聞きながらそんなことなど考えてしまった「今日のお仕事」でした・・・

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