
2022年12月18日
急激なゼロコロナ緩和で混乱の北京へ
人にもよく言われるが、私はどちらかと言うと運がいい方だと思う。
9月末にツアーが終了して、メンバーはそのまま銀川に帰ったのだが、私はレコーディング仕事があったのでそのまま北京に行った。
そしたら運のいいことに銀川市がロックダウン。
銀川には帰れないのでそのまま1ヶ月半ほど北京に滞在していたら、今後は北京がどんどん危なくなって来た。
銀川の方がまだマシとばかり北京をあとにした瞬間に、全ての北京市民は毎日のP C R検査が義務付けられ、検査結果が健康アプリに反映されてQ Rコードが緑色でなければ、商店や施設、タクシーにも乗れないという有様である。
銀川はそれほど厳しくなく、外地から帰って来た人は3日間のうちに2回P C R検査を受ければその後は健康アプリのQ Rコードは緑色のままで、それを施設入口のリーダーにかざせばどこにでも自由に出入りすることが出来る。
帰って来てから半月ほどは平和に過ごしていたのだが、11月25日にいきなり都市封鎖の通達が来た。
これは銀川の感染者数というより中国全土の感染者数がこれまでになく増えたことにより、地方政府もそれぞれに危機感を高めたためではないかと思う。
人生6度目の隔離(>_<)
銀川もついに都市封鎖!(◎_◎;) たかだか数十人の感染者で200万人以上の自由を奪うなんて凄いわぁ〜(>_<) 隔離は人生5度目だけどロックダウンは初めて!!デリバリーも出来んなるん?!(◎_◎;) 口コミで連絡来たので酒とか肉とか買いこんだ〜5日間と言うから飲んだくれますか〜(笑) って上海は4日と言われながら3ヶ月ロックダウンされたからのう〜 ((((;゚Д゚)))))))
末吉覚さんの投稿 2022年11月24日木曜日
隔離最終日〜(の予定なのぢゃがどうなることやら) マイナス13度の霜降る中、毎日のおつとめ敷地内PCR検査に凍えながら並ぶ〜 外国人はアプリが対応してないから手入力で時間かかるのよね〜後ろの人怒らんといてや〜ほんま怒りたいのはお互い様なんやから(>_<)
末吉覚さんの投稿 2022年11月28日月曜日
キタキタキターーーー!!! 最初の通知では11月29日までと書かれてるやろ〜今日は30日なのに何の通知もなく隔離は続く〜(涙) 食料はゲットしたからええけど酒が足りんのう・・・ 12月からのツアーも必然的に延期(涙)無職状態は続く(>_<)
末吉覚さんの投稿 2022年11月29日火曜日
今回のロックダウンは「ソフトロックダウン」程度のもので、飲食の店はデリバリー以外は営業禁止。私の住むマンション群は出入り禁止だが、そうでもなく自由に出入り出来る地区もあり、どうやらマンション群の社区と呼ばれる自治体に判断を任されているようだ。
ところが隔離中の11月24日に、新疆ウィグル地区の火災で死亡者が出て、それが防疫用柵で消防隊の到着遅れたためではないかということで、全国でゼロコロナ政策に反対する抗議活動が起きた。
私などは「第二の天安門事件に発展するかも」と心配していたのだが、拍子抜けのように政府はゼロコロナ政策を大幅に緩和することを発表した。2022年12月7日のことである。
これを受けて銀川では、スーパーや商業施設に入るための48時間以内の陰性証明の提示が不必要となった。
当然隔離もなし崩しになくなった・・・。
そんな頃である。北京でレコーディングの話が来た。
いや、話はだいぶ前からあったのだが、ゼロコロナ政策による厳しい行動制限や、外地からの流入規制、そして都会よりいつも1テンポ遅れて対策が変わるこの銀川に、北京から帰って来てちゃんと入れるのかという心配があったので「今は北京には行けない」と言うしかなかったのだ。
ところがこの12月7日の規制緩和の発表に続いて、中国で省を跨ぐ移動の際の陰性証明の提示が撤廃された。
これはコロナ禍で長くツアーを廻っていた私に取ってはとても嬉しいニュースである。
実はI T大国の中国で、便利に思えるそのアプリの数々、特に省ごとに違う健康アプリのほとんどは外国人には対応していないのだ。
ところが北京に住む友人の話によると、規制が緩和されたと言っても、飲食店などに入るためには48時間以内の陰性証明が必要で、ところが規制緩和に伴ってP C R検査場を次々と閉鎖しているので、今度はちゃんと検査を受けられる検査場を探すのが大変。特に私たち外国人にとっては外国人に対応していないP C R検査場というのもあるから更に大変である。
こんな笑い話も伝わって来る。
「陰性証明が必要なんだけどどこにも検査やってないじゃない」
「検査なら病院行ってやれ」
「その病院に入るのに陰性証明が必要なんだよ!!」
銀川のような逆に対応の遅い地方都市はまだよいが、北京など大都市では急激な政策転換によってかなりの混乱が起こっているようだ。
そんな大混乱の中、12月9日に北京行きが決まった。出発の頃には北京で爆発的に感染者数が増えているという噂も聞くが、銀川の友人たちなんかは
「お、いいじゃん!!帰って来たらメシ食おう」
と笑う。
感染したらメシどころじゃないのに何を言ってるんだろう、とその時にはわからなかったが後にそれがわかることとなる。
さて、そうなると心配なのはP C R検査である。北京の友人夫婦は、久しぶりに私と飲むことを楽しみにしてP C R検査を受けているのだが、毎日検査しても結果が全然反映されず、結局8日間検査を受けてないことになっており、飲食店どころかどこの施設にも入れないのだ。
北京で陰性証明をゲットするのは難しいだろうと思い、私は出発前に銀川でP C R検査をすることにした。
噂通りP C R検査場が減って来ているので長蛇の列である。
検査は今までは無料だったのだが、今回から有料になっていた。3.5元と言えば円安とは言え70円程度である。安い!!
10人分の検体を1つの試験管にまとめる方式の検査である。
結果はだいたい半日後には出る。夜汽車に乗って朝着く頃には検査結果がアプリに反映されていることだろう。
外国人はQ Rコードを読み取るだけではダメで、そこから手打ちにパスポート情報などを入力するのだが、スペルなどちょっと間違えただけで結果は反映されない。
私も実際それでP C R検査を受けているのに反映されずにQ Rコードが黄色になって困ったことがあったが、この検査場はいつも必ず反映されるので安心なのである。
さて、いつものように夜汽車に乗ったらすぐ寝られるようにガンガンに酒を飲んで銀川駅へ〜
これまでは厳重な健康アプリや行動アプリのチェックがあったのだが、それらが全くなくなり何もチェックされなかった。
北京に着いた。地図アプリを開いたら見慣れない赤いものがたくさんある。
「疫情高风险」つまりここには感染者がいるから大変だよ、という意味である。
北京に着いてからも全く何のチェックもなく、昔検査場だった場所に看板だけがまだ撤去されずに残っていた。
そこからは地下鉄に乗り換えるのだが、見ればきっと同じ列車に乗って来たのだろう、防護服を来ている親子連れらしき乗客もいた。
きっと感染爆発と言われている北京に行くのに、娘だけは感染させないようにという親心なのだろう。
「コロナは怖い病気だよ」と宣伝してゼロコロナ政策をやっていた政府は、いきなり「オミクロン株は全く怖くない」と言い始めた。人民は自分の身は自分で守るしかない。全国の薬屋から解熱剤などの風邪薬が全て売り切れたという噂である。
地下鉄も、一時期はガラガラだったと聞いたがそうでもなくそこそこの乗客がいた。
レコーディングまでには時間があるのでスタバにコーヒーを飲みに行ったら陰性証明の提出を求められた。
それから、知り合いの中国人がやっている日本料理屋に行ったのだが、そこはホテルの中の施設という厳格なはずの場所なのに、そこでは陰性証明の提出は必要ではなく、Q Rコードをスキャンして「この場所に来た」という足跡を残すのみであった。きっと規制緩和を受けての対応が店によって違うのだろう。
日本語が上手なママさんは病気で出勤してないということだが、来たことを告げると喜んでメッセージを送って来た。
「実はコロナにかかってしまったんです」
と泣いている。
ママさんはガンの闘病生活もしており、そこにコロナは大変だろう。
「もうね、家とスーパーマーケットだけしか行ってなかったのに感染しちゃうなんて、なんて酷い国なの!!」
と怒っているが、ママさん・・・ここはあなたの国です・・・(笑)
しばらくメッセージでやり取りをした後スタジオへ。
出迎えてくれたのはドラムをレコーディングする歌手本人とエンジニアの二人。手にはアルコール噴霧器を持っていて、握手の度に消毒したり、決してマスクを外さなかったり、とてもコロナを恐れているように見えて緊張したが、理由は他にあったことが後に判明する。
香港のAlex Toという有名歌手のレコーディングやった〜 若く見えるけど実は同じ世代らしく、古いソウルやディスコの音を求めてらっしゃったので、スネアに紙を貼ってみたり、タムを全部外してみたり、色々遊びながら試してみて楽しかった〜
末吉覚さんの投稿 2022年12月10日土曜日
レコーディングは順調で、5時には全ての作業を終えて「飲みに行こう」ということになった。歌手も一緒に行くのかと思ったら「帰る」と言うので、結局エンジニアと二人で深酒をすることとなる。場所は日本居酒屋だったのだがそこでも陰性証明の提出は必要ではなく、Q Rコードをスキャンして足跡を残すのみであった。
前述の友人ご夫婦も招待しようと連絡したらショッキングな事実を伝えられた。
私と一緒に飲むのを楽しみにして、そのために飲み屋に入るためにP C R検査を受けて、結果が出ないので毎日毎日検査を受け続けていたのだが、先日出た結果が「陽性」。厳密には「ひとつの試験管で検査した十人の中に陽性者がいた」というもので、彼ら自身が陽性なのかどうかはわからない。
そもそも10人がひとつの試験管で検査するなんて、まるで毎日ロシアンルーレットをやっているようなものである。
せめてもの救いが、昔なら有無を言わさず収容所のような隔離施設に送られるのだが、今は緩和されて自宅で自主隔離となっているようだ。
エンジニアと盛り上がって飲んでいる時にまたショッキングな事実を聞いた。
「歌手が一緒に飲めなくてすみませんと謝ってましたよ。実は彼も陽性で」
って陽性なのにスタジオ来てたの?・・・というより一瞬でそこまで緩くなったということか・・・
そして彼自身も私にショッキングなことを言った。
「実は妻も陽性で家で寝てるんです」
って私は今陽性者と同居している男とマスクを外して酒を飲んでいるの?!!
あれだけ幻覚だった中国のゼロコロナ政策が、一瞬のうちにここまで緩くなっているのが信じられない。
酔いも覚めてしまったので帰ろうと、院子の同居人に連絡を取る。
院子というのは中国伝統的な長屋式住居で、ひとつの庭(院子)を囲むように3方もしくは4方の建物が建っており、院子を共有してそれぞれの棟は独立して緩い共同生活を営むという、友人と暮らすなら願ってもない生活環境である。
今は北京市内にはこういう伝統的住居は無くなって全て高層マンションになってしまったが、辺鄙な場所にはまだ残っていて、私の院子も市内から30kmほど離れた辺鄙な村の中にある。
ところが同居人が言うには、その村にはタクシーの乗り入れも出来なければ、この村の住人である証明書(出入証)がなければ入ることが出来ないと言うのだ。
もう緩いのか厳しいのかわからないゼロコロナ政策緩和!!あるところではとてつもなく厳しく、あるところではとてつもなく緩い・・・
その日は友人宅に泊まらせて頂いて、翌朝冷静になって考えてみて怖くなった。
例えマスクをしてたとしても感染者と一日スタジオで一緒にいて、その後感染者の同居人と一緒にマスクを外して酒を飲んでた私は、普通で考えると当然感染しているのでは?・・・
少なくとも濃厚接触者であることだけは確かである。ちょっと昔ならこれだけで隔離施設行きである。
私はもう既に6回隔離されていて、病気より何より隔離が怖い。
あともし感染してたとしたら、今度は人に感染してしまうのが怖い。特に一緒にバンドをやっているメンバーにである。
ちょうどバンドのグループチャットでは感染について色々面白おかしいやり取りがされていた。
北京のスタッフに対して、「北京は大変なの?じゃあなんか菌がついてるの郵送してよ」
とか何の冗談なのかよくわからない。
私だけ大真面目に昨日のレコーディングの話をして、「このまま北京に滞在して様子を見ようか?」と提案してみる。
ところがシリアスになっている私をよそに「イエィ!!」と盛り上がっている。
「Funky早く帰って来て感染してよ」とか「Funkyは僕らの救世主だ」とか訳がわからない。
こちらはとりあえず銀川に帰ったら1週間ぐらいは自主隔離かなと思っていたのに、「じゃあ火曜日のリハが終わったらみんなでFunky囲んでメシ行くからな!!」と大盛り上がり・・・
過去のチャット履歴を見ると、どうやらどこかのバンドのメンバーが感染してツアーが中止になったらしい。
布衣楽隊の冬のツアーは本来ならもう始まっている予定だったが、先月のゼロコロナ政策による締め付けのため来年1月からに延期になった。
だからこの12月の間に出来ればメンバー全員感染しておきたいのだ。
「コロナは一度感染すると半年はもう感染しない」という医者の発言がネットで出回っている。
もう一体何を信じていいのやらわからない(>_<)
銀川に帰り着いて、私はまだ感染しているのかどうかはわからない。
P C R検査を受ければもっと色んなめんどくさいことが起きるだろうから怖くて受けられないのだ。
もう今ではP C R検査を受けなくてもこの国で生きてゆける。
省を跨ぐ移動も何の障害もなく出来る。このような無症状の感染者が平気で中国じゅうを飛び回っているという事例はきっともっともっとたくさんあるのだ。
なのに政府発表による中国のコロナ感染者の数は減ってゆく一方である。
もう誰もP C R検査を受けないのに、一体何を根拠にこの数字を出しているのか?
そのうち中国政府はこう発表するかも知れない。
「我が国の偉大なるゼロコロナ政策を大成功を収め、ついにこの国ではひとりのコロナ患者もいなくなりました!!」
上に政策あれば下に対策あり。
この国の人民は政府の発表に翻弄されながらも逞しく「自分の身は自分で守って」生きてゆくのだ。
銀川に戻ったその日、政府は「行動アプリ」の撤廃を発表した。
これまで、過去1週間(ちょっと前までは2週間だった)に行った都市の一覧が出るアプリである。仲間内は大喜びでこのニュースを拡散した。
しかしだからと言ってこの国の国民の行動の監視が緩まるわけではない。
「コロナに関して」ということだけであることに間違いはなかろう。
ゼロコロナ緩和・・・まだまだ混乱は続きそうだが、このまま上手く着地して収束してくれることを願うのみである。