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2018年9月 5日

箱バン

どうしてミュージシャンになったかと言う問いに関して、
「女にモテたかった」
とか
「有名になりたかった」
とか
「大金持ちになりたかった」
とか答える人がいるが、私の場合はどれも当てはまらない。

強いて言うと、
「毎日ドラムを叩いて暮らしてゆきたかった」
である。

高校の時に担任の先生に言った言葉からして、
「大阪行ってキャバレーなんかで演奏する」
・・・つまり「箱バン」をやるというのが「夢」だったのだ。

この世にいくつものパラレルワールドがあるとしたら、
お隣、もしくはごく近いパラレルワールドのファンキー末吉は箱バンをやって生活しているかも知れない・・・

ところが「この世界」では縁がなく、私は「箱バン」という仕事をやったことがない。

一度六本木のライブハウスが、
バンド演奏が終わったらすぐに箱バンが入る店だったので、
そのまま居残って叩かせてもらったことがある。

バンマスが「何番」と番号を言ったら譜面のそのページを開いて、
ドラム譜しか書かれてないその譜面を見ていきなり叩く・・・

コード譜を見て叩くのに慣れてたので最初は手こずったが、
1ステージ何とか乗り切って、その箱バンのドラマーさんにも褒められた(笑)

いや、なかなか「技術職」で楽しい職業だなと思ったのだが、
それからはもう「縁」はなく、箱バンの「仕事」というのは結局今に至るまでやったことがない。

人によっては
「やらない方がいいよ。あの世界から抜けられなくなるよ」
と言う人もいるが、確かに北京のバー文化全盛の頃には、
三里屯なんかのどのバーも流行歌なんかをやっていて、
「その仕事やったらもう戻って来れない」
と言われてた頃もあった。

バンドでライブハウスに出るとビール1杯飲めるかどうかの20元ぐらいしか貰えないのが、そこで流行歌を叩いてるとその数倍のギャラを毎日貰えるのだ・・・

酒吧歌手(酒場歌手)みたいなのもたくさんいて、
ライブハウスなんかで「今からこのバンドでのし上がってやるぞ!!」みたいな「ボーカリスト」とは明らかに「何か」が違っていた。

ライブハウスのボーカリストの方が明らかに「キラキラ」してた・・・

それは何故だか考えてみたことがある。
酒場で流行歌を歌う、客が拍手する、
それは決してその歌手に送られている拍手ではない。

オリジナルの楽曲に対して送られている拍手なのだ・・・

それに「満足」して多額のギャラをもらい、
生活もそれに合わせて贅沢になるから、もう「抜けられない」のである。

そんな「ネガティブ」なイメージもある「箱バン」ではあるが、
まあ昔憧れた職業でもあるので、チャンスがあったら時々見に行ったりする。

ここ、タイの「チャーン島」というところにも
「The Rock Bar」という名前のロックバーがあり、
Googleマップでその名前を見た時から気になって仕方がなかった。

TheRockBar.jpg

昨日ついに行って来たのよ〜!!

Rock Barという名のロックバーに来てたらシーズンオフで客おらず(笑) - Spherical Image - RICOH THETA

客はほぼ私ひとり・・・(>_<)

まあね、シーズンオフの雨季やししゃーないわなぁ・・・
演奏するかな、と思ってたらほぼ私ひとりのために演奏を始めてくれた。

私ひとりのために演奏してくれました\(^o^)/ - Spherical Image - RICOH THETA

演目はスタンドバイミーから始まって、ロックナンバーも古目の曲が多くて楽しめた。

ベトナムのダナンのロックバーではバンドの年齢も若く、何より客が若いので新しめのロックが多く演奏されてたが、カンボジアのプノンペンのロックバーでは、客が年寄りの欧米人が多いので古めのロックが多かった。

新しめのロックってあんましよくわからへんのよねぇ・・・(笑)

ステージの上からボーカルが「どっから来たの?」と聞くから「Japan」と答えると、
「え?うちのキーボーディストは半分日本人よ」
と言うのでステージの合間に日本語で話しかけてみたけど、あいにく日本語はわからないらしい・・・

私はドラマーだと言うと「よしJamセッションしよう」と言うので叩かせて頂いた。

やっぱ叩かないわけはないですよねぇ〜(笑) しゃーないなぁ〜・・・ - Spherical Image - RICOH THETA

演目はローリングストーンズの「ブラウンシュガー」と、
ドゥービーブラザースの「ロングトレインランニン」。

ドラムソロも頂きました〜

終わってバンドのメンバーにも奢ってあげて一緒に飲んでたんだけど、
びっくりしたのは彼らはタイ人のバンドではなくフィリピンから来ているバンドだと!(◎_◎;)

高校の頃、生まれ故郷の坂出という田舎町にも「ディスコ」たるものが出来たというので行ってみたらフィリピンバンドが入っていて「上手メェ!!」と思ったことがある。

彼らは母国でも英語を話すことが多く、洋楽が「自分の言葉」として入って来るという話を聞いて「羨ましい」と思った記憶がある。

また演奏技術も高いので、こうして世界中で「箱バン」として活躍しているのだろう・・・

・・・それにしても首都であるバンコクから300km離れた、
トラートという街から更にフェリーに乗って、
島には交通機関がないのでトゥクトゥクに乗ってやっと着くような、
そんな街でもう5年も暮らしていると言う・・・

パラレルワールドのファンキー末吉もどこかこんな外国で箱バンやってるのかな・・・
などと思いながらこの日は酔い潰れてホテルに帰った。


翌日、「また明日も来るよ」と言ってはいたものの、
旅も最終日なのでひとりでステーキなど食ってたら・・・
向かいのホテルから何やら生演奏が聞こえて来る・・・

この小さな街でいっぱい箱バンがいるんだな・・・
・・・と思ってたらいきなりBEYONDの曲が!!!(◎_◎;)

">BEYOND【海闊天空】

不意を打たれてワインの酔いも相成って涙が出て来た・・・
黄家駒の遺作が、海を越えてこんなところにまで・・・

そのバンドの音に聞き入ってたのだが、
何やら汪峰の曲も・・・!(◎_◎;)

いや、確かに私がレコーディングした曲である・・・

ひょっとして中国人のバンドじゃないか?・・・
そう思って店に入っていった。

箱バンド鑑賞ちう〜 - Spherical Image - RICOH THETA

いやね、これも絶対フィリピンバンド!!
少なくとも中国人はいない!!

だって中国人ミュージシャンなら俺の顔みたら絶対挨拶するもん(笑)

ステージが終わってちょっと喋ってみた。
「どうして中国の曲なんかレパートリーにあるの?」

「だって中国人のお客さんが喜ぶでしょ」

!(◎_◎;)・・・さっきやった最初の曲は広東語だし、次の曲は北京語よ。
どうやって覚えるの?・・・

「うーん、耳で聞いてだいたいね(笑)」

凄いなぁ・・・
私は日本人だと言ったので、きっと日本語の演目もあるのだろう・・・用意してたようだが、酔いも回ったのでそそくさと失礼した。

帰りながら考えた。
楽して金が稼げるなんてとんでもない!!
これはこれで大変なプロフェッショナルやぞ!!・・・

問題は毎日毎日の演奏に追われて、「上」を見なくなること・・・
このブログにも書いたが、そうなるともう「ミュージシャンとしておしまい」!!

でもそれは箱バンじゃなくても同じである。

もうすぐまた布衣のツアーが始まるが、
毎日毎日同じ曲の演奏で「上」を見なくなったら・・・

さてと、この片田舎の箱バンドから色々学ばせて頂いた。
今日はもう上海に帰って、明日からずーっとツアーである。

この「世界」の私もそうだが、
パラレルワールドで箱バンをやっているかも知れないファンキー末吉にも言いたい。

気を抜かずに「上」を見て頑張ろう!!

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