
2015年12月29日
前渡金ゲット!!
ここだけの話、北京では現在仕事の数に対してミュージシャンが絶対的に足りていないのだ。
先日もリハーサル中にそのバンドのベーシストからいきなり
「12月29日にリハで1月3日本番の仕事が出来ないか」
と耳打ちされた。
29日はこうして日本戻り、
そして1月3日は豊橋でイベントが入っているので無理である。
悲しそうに頷いてまたベースを弾く彼・・・
そして昨日には「キーボードが見つからないんだ」と泣きが来た。
「有希子(よーしーず)はキーボードでこんな仕事受けてくれないかなぁ・・・」
ライブで左手でベース右手でキーボードを弾くのを見てた彼は藁をも掴む思いでそんなことを言う・・・
「あ、大丈夫大丈夫!!スケジュール聞いとくから」
勝手に安請け合いするワシ(笑)
日本でもキーボードとして仕事をしてたみたいだから大丈夫じゃろう。
スケジュールは大丈夫そうなので勝手にOKしておいた(笑)
あとは言葉の問題のみ!!
頑張って覚えたての中国語で直接コミュニケーション取るよーに!!・・・
・・・とまあ、こんなに数日後のスケジュールがぽんと決まるんだから全てのミュージシャンがそれに合わせられるはずがない。
いつもどこかで誰かがミュージシャンを探しているというのが現状である・・・
さて前置きはさておいて、
前回のテレビの収録のバックバンドの話・・・
国内有名歌手の曲をアメリカやイギリスの有名アレンジャーにアレンジさせて、
それを日本の一流ミュージシャンに演奏させようという企画・・・
ネット番組などで国内全てのミュージシャンが駆り出された話は書いたが、
結局のところこの数多い(ネットも含む)テレビ番組が、
それぞれ国内トップのミュージシャンを片っ端から押さえていったら、
そもそもいくら若手のミュージシャンが育って来たと言ったって足りるわけがないのだ。
そこで日本人ミュージシャンに目をつけた・・・
ここは敢えて胸を張って自慢させてもらうが、
「日本人ミュージシャンは腕がよくて仕事が真面目である」
という中国の音楽界での評判はワシが25年間の活動の中で築き上げて来たものである。
だから「日本人ミュージシャンを集めてくれ」と言われたところで、
ヤツらは別にそれぞれのミュージシャンの音源など必要としない。
「ファンキーが一流と言うのだからそれは一流に違いない」
と暗黙のうちに思われてしまっているのである。
いわば「ブランド」である。
だからその期待に応えられるであろう友人を集めた。
彼らなら私の25年間に泥を塗ることは絶対にないだろう。
しかし初めての「中国の仕事」がの方が彼らとワシの友情に泥を塗る可能性はある(涙)
だからワシは
「スケジュールを大決定にするには必ず前渡金を支払うこと」
という条件をつけた。
それなら例えドタキャンになったとしても、その空白のスケジュールに対して報酬を支払っているわけなので少なくとも友情にはヒビは入らないだろう(笑)
ところがこの「中国人から金を取る」ことこそがどんな難曲を初見で演奏するよりも難しいことなのである。
というわけで「中国人には中国人を」で間にLaoLuanを立てた。
そしたら何と彼がちゃんと前渡金を取ってくれたのである(驚)
ワシがリハーサルをしているスタジオにLaoLuanが金を届けに来た。
リハを中断して分厚い封筒を受け取る(恐)
周りに気付かれないようにそっと中を覗くと、
日本円だけではなく中国元も混ざっている。
「明日日本に帰るから日本円に両替して持って来てね」
と言ってたのだが、中国人の日本爆買いツアーのおかげで近頃では日本円に両替は数日待ちという状況らしい・・・
中国元の最高紙幣は100元で日本円でたかだか2千円程度なので、
こうしてちょっとまとまったギャラとかになると札束いくつにもなるのだ・・・
日本人のミュージシャンを紹介して、
彼らへの前渡金に中国人がどさっと札束を渡す・・・
凄い時代になったもんじゃのう・・・
問題はその「額」が日本人ミュージシャンにとって満足出来る額なのかということである。
封筒の中身を確認したいのはマウンテンマウンテンなのだが、
いかんせんスタジオの中では他のミュージシャンの目がある。
今日の過酷な移動のまず最初、北京駅では、
ただでさえ置き引きやスリが多いので札束の封筒なんて出せやしない・・・
トイレの中でとも思ったが、大きなトランクを外に置いてたら置き引きにあってしまう・・・
天津までの寝台車の中でカーテンを引いてこっそり金勘定しようと思ったが、
日本の寝台車と違って仕切りのカーテンがない・・・
天津駅に着いて駅前のホテルで仮眠を取ろうと思ったが外国人宿泊禁止(>_<)
タクシー捕まえて天津空港まで行く途中にとも思ったが、
運転手に見られた日にゃぁノックアウト強盗されてしまって目も当てられない・・・
結局天津空港に着いて障害者用の大きなトイレの中で封筒を開いてみた。
なんとその額は立派に日本人ミュージシャンが満足出来る額であろうとワシにはそう感じた。
まあLaoLuanがいくら取ってるかは知らんが、
そもそもLaoLuanがいなければこの金は取れなかったわけだから、
結果ミュージシャンが満足する額が残ればそれでよい。
かくして帰国したらこの金を各ミュージシャンに振り込む!!
そしたら1月には彼らが北京にやって来て、
それこそ期待通り以上の演奏をしてくれるだろう。
すると北京のミュージシャン達はきっとワシにこう言い出すのだ。
「ファンキーさん、ほんとミュージシャンが見つからないんです。困ってるんです、日本から呼んでもらえません?」
日本人は世界一真面目で腕のいい民族だと思っている。
ところがそのギャランティーはワシの知る限りこの30年上がっていない。
北京は年々上がっているだけでなく、ここに来ての円安人民元高。
上海バンスキングの時代のように、
活動の場がない日本に見切りをつけて中国に稼ぎに来る・・・
いや、渋谷有希子(よーしーず)のように中国に引っ越して来るようなミュージシャンがどんどん増えて来たとしても不思議ではないと思うぞ・・・
中国人はその昔、戦乱の続く祖国に見切りをつけて、
新たな場所へ飛び出して行ってそこの言葉と文化を学び、
「華僑」となってそこを新天地としていった。
島国根性に見切りをつけて
日本人も飛び出していって「倭僑」となってそこを新天地としてゆけばいいのだ!!
ワシがよく講演会などで話している「倭僑のススメ」である。
中国人なら「華僑」?
日本人なら「倭僑」?
じゃあフランス人なら「仏教」?・・・
おあとがよろしいようで・・・