
2014年8月 6日
カラムーチョZ〜秘密組織コイケヤのテーマ〜制作秘話
知り合いからこんな仕事が廻って来た。
作曲と音楽制作依頼
内容:コイケヤの新製品カラムーチョZの音楽
歌う人:水木一郎
水木さんとは一度アウェイインザライフの舞台でご一緒した。
奇しくもあの「マジンガーZ」のテーマをバンドで演奏したではないか!!
その時の資料でもらった「マジンガーZ」を聞き返しながら考える・・・
ワシの音楽のルーツはひょっとしたらアニソンかも知れない・・・
小学校の頃、統計かなんかを勉強する時の材料だったと思うが、
「昨日何時間テレビを見ましたか?」というアンケートに、
みんなは「30分」とか「1時間」とか書いているのに、
先生が1枚の紙を取り出して「これは長いですねぇ・・・」と言うので、
それはてっきりワシだと思ったら「2時間」とかで、
それだけでも教室は「凄〜い・・・誰なの?」と騒然としてたのに、
ワシの書いた紙を取り出した瞬間に先生が絶句した。
6時間・・・
いや、別に毎日それだけテレビを見ているわけではない。
うちは両親が商売をしてたので家には誰もいないし、
その日は確か風邪気味で学校から帰ったらテレビの前に布団を敷いてずーっと寝っ転がっていたのだ。
そしていつの日かテレビの内容よりも(まあそれもあるのだが)そのテーマソングに興味を持つようになって来る。
覚えている一番古い記憶で「子連れ狼」、
このテーマソングを一生懸命テープレコーダーに録音してた。
録音と言ってもテレビのスピーカーの前にテレコを置いて、
エアダビングでテレコのマイクで録音していたのだ(笑)
その後アマチュア無線などをやり出して電気に興味を持ち、
家にあったステレオを分解し始める。
そこでスピーカーが左右にあることを発見し、
よく聞くとブラスセクションがひとつのスピーカーからしか聞こえず、
反対側はそのリバーブ音だけが聞こえてたり、
右と左のコードをショートさせると音が真ん中から聞こえて来たり、
片方を逆につなぐと今度はベースとか真ん中の音が逆相で打ち消しあって消えて左右に定位している音だけが聞こえたり、
そんなことをやって遊ぶようになり出した。
その時によく聞いていたのが仮面ライダーやバビル二世や、
その辺のアニソンだったのだ。
その頃のアニソンはオーケストラで一発録音のが多く、
音に興味を持ち始めたばかりの末吉少年は必然的にブラスだストリングスだとオーケストラに興味を持つ。
その後中学生になってからロックの洗礼を受けることになるが、
今にしてみればドラマーの分際でオーケストラのアレンジが出来たりするのはこの頃の原体験があるからだと思う。
話が横道に逸れたが、だからワシにとっては
ストリングスはサビでタリラリラーンと走るもの!!
ブラスはパパラパパーと歯切れよく!!
など自分のオーケストラアレンジはアニソンの影響は大きい。
だからアウェイインザライフでマジンガーZを演奏するとなった時には血湧き肉踊った。
あの歌のキモはティンパニであるが、
子供の頃はわからんかったが今聞くとあれが大きくリズムがズレてるのな(笑)
ティンパニを打ち込んで同期させてもどうしても雰囲気が出なかったので、
あのオケをそのまま使ってリズムを補正して、
EQとかでティンパニ以外の音を目立たないようにして使ったもんなぁ・・・
そうそう、「時代」なのであるが、冒頭のピューンという安っぽいシンセ、
あれが入るだけで当初はむっちゃ「新しいマシン」というイメージやったのが、
今となってはあの音を再現するのは難しいからあれもそのまま使ったような記憶がある。
もちろんサビで走るストリングスもそのままのラインを打ち込んで使ったぞよ(笑)
そんなこともあってワシはマジンガーZをかなり分析し切ってたので、
今度の仕事は漠然とあの頃のアニソン、
つまりオーケストラ一発録音でブラスがリズムを刻み、ストリングスが走り回るサウンドをイメージしていた。
さて歌詞が届いた。
蓋を開けてみたらこの仕事は「詞先」の仕事だったのだ。
燃えあがれ 勝負だゼ
パリッとしようぜ男なら
夢を掴むその日まで
カラムーチョ Z!
地球を愛す おーおーノンフライ
時空を超えたレッドサタン
激辛バトルだ 涙を拭くな
ナ・リ・マ・ス、成増
世界一に
火を噴くぜ (おしりがいたーい)
秘密のサンカク (教えてあげないよ)
デンセツ! 伝説の! 秘密組織コイケヤ
おうっ!!やはり「Z」という部分が入っている!!
これはやはりマジンガーZのように「ゼーット!!」と叫んでもらわねばならぬ(笑)
当然ながらそこが一番盛り上がる部分になるのだが、
ところがマジンガーZと違ってこの詞の場合は冒頭にそれがある。
「詞先」の場合その詞が「構成」までも支配してしまうということがやっかいな部分である。
そこでマジンガーZを聞き返してみて分析するに、
この曲もおそらくは「詞先」だったのだろう。
AーBーAの形式のようで、最初のAは8小節使って低いところからゆっくりサビまで盛り上がってゆくのに対して、
最後のAは一瞬で「ゼーット」まで持ってゆく。
これは「曲先」で詞もなく純粋にメロディーだけを作る人のアイデアとしては非常に奇妙である。
「詞がこうだから」という理由でそうなったと考えると心なしか納得する。
(真実のほどはわかりませんが)
そこでワシも頑張る!!
詞の並びが自分の考えていた構成と違ってたって、
純粋にその詞が「歌いやすい」ように組み合わされてさえいれば、
マジンガーZのような「黄金比率」の構成になるのだ!!!
というわけで詞とにらめっこの日々が続く・・・
まあワシはドラマーが本業なので日々はセッションだひとりドラムだの生活の中で、例えば電車や車や飛行機(これが一番多かったりするが)に乗っている時間や、
その他うんこや日々の余った時間を活用してまずは大雑把に考えるのだ。
そんなこんなで第一回目のミーティングの日が近づいて来たので本格的に考える。
理数系なので物理的に消去法などを使って考えるに、
「ゼーット」が冒頭にあるのならもう何をどうしようがサビ始まりしかない!!
問題は、そうなるとこの詞は4部構成となってメロディーがつけにくくなってしまうということである。
マジンガーZのようにストリングスが走るあのBメロはどの部分になる?・・・
当初は「火を噴くぜ」の部分をこのような展開にして、
マジンガーZよろしく最後はAメロに似た一節だけで終わろうと思ったのだが、
そうするとAメロが長すぎてどうも間持ちがしない・・・
そこでまた詞とにらめっこをしながらふと見ると、
(おしりがいたーい)とかはメロディーではなく子供の掛け声でよいではないか!!
ではそこからまた最初のサビと同じメロディーではどうだろう・・・
試しに最初のサビのメロディーに乗せてみるとこれが偶然見事に乗った!!
「カラムーチョZ」と「秘密組織コイケヤ」は字数が違うが、
それはまあ「最後だけはちょっと違うんですよ」で十分成り立つだろう・・・
ちなみにワシが曲を作る時はまずサビから作る。
これはRunnerやリゾラバや、
当時の「必ずヒットする曲を作れ!!」という無茶苦茶なミッションの中で体得した一種の手法論なのだが、
サビの次に作るのはAメロの歌い出しである。
まあサビの歌い出しとAメロの歌い出しさえキャッチーであれば、
まああとはヒットするかヒットしないかはプロモーション次第だよと開き直れる(笑)
この曲のAメロはフック(引っかかり)を作るために、
わざとドレミファソラシド以外の音を使っている。
キーがCの場合はメロディーは鍵盤の白鍵だけで弾けるものとなるが、
わざとそうではない音を使うためにそれ用のコード付けがある。
キーがCの場合のB7などがそうなのだが、
歌い出しの小節1拍目にちょうどレ#、つまり黒鍵で弾く音が来るようにしている。
ちょっと「あれ?」という感じでいいツカミになるのよ〜にであるが、
ちなみに単調なサビメロにちょっと変化をつけるために、
サビのコード付けのところにもこの手法を使っていてる。
キーがAmの場合Fのコードは通常Fメジャー7になるのだが、
わざとF7にしてちょっとオルタードな雰囲気にしているのだ。
まあメロディーこそここには落ちてないが、
このサビのようにベタな五音階旋律の場合やはりちょっとフックをと思ってミの音をわざとフラットさせているのである。
まあこのミbはメロディーでは歌ってないが、後にストリングスとかブラスで強調するという計画である。
さて理屈はさておいて、サビーAメロと来たら自然に流れるBメロを作るが、
この時にあまり欲をかいてはいけない。
Aメロ、Bメロ、サビのことを英語でVerse Bridge Chorusと言う。
つまりBメロは「橋渡し」をする部分であり、
そこにサビのようなキャッチーなメロディーを持って来る必要はない。
要はAメロから自然に受け継いで、サビに入った時に気持ちよければそれでよい。
さてこうして一応メロディーは出来た。
ここからワシの最大の難関が始まる。
「デモ作り」である・・・
二井原はワシに言った。
「せっかくいいメロディーなんやからお前が歌うな!!
お前が歌えばどんないいメロディーも悪く聞こえる」
・・・(涙)・・・
しかし往々にして「クライアント」というのはシンセメロでメロディーを聞かせてもイメージ出来ないものである。
それは例えて言うと新製品のお菓子のプレゼンでワシなんかに、
「これはまだ完成品ではないのですが、これに手を加えてこのようになることを想像して食べてみて下さい」
と言われてもワシら素人にはそれが最終的にどのような味になるかは皆目見当がつかないのと同じである。
だからせめて「仮歌」で歌ってやらねば「歌」に聞こえないのだから歌うしかない・・・(涙)
アレンジの方向性はワシの頭の中にはあるもののまだ決定ではないので、
まあ「メロディーのプレゼン」ということでギターと歌(とこれをシンセメロにしたもの)だけでデモを作る。
またこの「プレゼン」っつうのが緊張するのな・・・(恐)
ワシにこの仕事を紹介してくれた会社の人と、
コイケヤの担当者とが雁首並べて店にやって来てくれた。
恐る恐るとりあえずシンセメロバージョンを聞かせる・・・無反応・・・
あかんやん!!・・・というわけで禁断のワシの仮歌による歌入りデモ・・・
これ・・・ホンマ博打やな(笑)
シンセメロで「うんなかなかいいじゃない?」と思ってた人達にヘタしたら冷水を浴びせかけることになりかねない(笑)
結果はその時には結局結論は出ず、
とりあえずちゃんとしたデモを作って送ってくれということになる。
さてそうなるとそこからが「アレンジ」という作業である。
このアレンジによって曲のイメージが固定されるから、
「こんな風に」が「違う風に」なってメロディー自体を否定される可能性も出て来る。
あのう・・・
ワシは自分のルーツである昔のアニソン、
オーケストラ同時録音風でラッパがパパラパーと鳴ってストリングスがタリラリラーンと走る、
そんな感じのイメージを一生懸命説明する・・・
いやっ!!
クライアントがきっぱりとそれを否定した。
「曲のイメージはヘビーメタルにして下さい!!」
げっ!!!
しかしメタルというのは得意分野なので逆に気が楽である。
メタルアレンジというのは即ちギターアレンジ、
つまりギタリストによってそのサウンドは大きく変化するので、
取りあえずはワシはこのギターを弾いてもらう候補として思い付いた田川ヒロアキの映像を見せる。
一同唖然・・・
よっしゃー掴んだ!!
これで田川くんに発注決定!!
〆切を決めてそれまでにアレンジ込みのデモを作成することになる。
さてアレンジであるが、
これに一番大切な部分は「イントロ」である。
イントロにキャッチーな掴みを作ることがアレンジ作業の一番のキモであるので、
ここにたっぷり数日時間をかけてイントロのフレーズを考える。
ロック系のイントロには、
1、メロで持ってゆく
2、リフで持ってゆく
等いろんな手法があるが、
歌メロがアニソンよろしくポップに作ってあるのでドイントロはやはりリフで攻めることにした。
「田川さんのギターもフィーチャリングして下さいね」
というクライアントの意見も取り入れ、
とりあえずその次にすぐにギターメロに行くようにしてとりあえずイントロは完成!!
ちなみにこの時点でワシはそのギターメロまで作ってデモ(田川くんに渡す段階)にしているが、
それは「指定」ではなく自由に変えていいようにする。
ギターも弾けないアレンジャー(ワシのこと)がいろいろ指定するよりも、
ギタリストが自分のフィーリングで弾いた方がより「ロック」になったりするからである。
さてイントロさえ出来ればワンコーラスまではすんなりアレンジ出来たが、
ワンコーラス終わってからはたと頭を抱える。
この詞の構成は2番も1番と同じく
サビーAメローBメローサビ
となっている・・・
本当は1番がサビで終わった場合は流れとしては次はAメロから入るのが一番流れがいいのよーん(>_<)
2番は冒頭のサビをカットするか・・・いやいやそれではキモである「ゼーット!!」がなくなってしまう・・・
しばらく悩んでいるうちにひょっとクライアントの要望を思い出す。
「出来ればファンキーさんのドラムもフィーチャリングして頂ければ嬉しいのですが・・・」
そこで決断!!
通常のポップス構成、いわゆる2ハーフという
1番ー2番ー間奏ーBメロもしくはサビ
という構成はあきらめてもっと変則的な構成にしよう!!!
1番が終わったらとりあえずドラムをフィーチャリングして、
そこから長いギターソロ!!!
たっぷりと田川くんをフィーチャリングした後に仕切り直してまたサビ始まりでワンコーラス歌う!!
これしか物理的に方法がないのだ!!
もし「これはちょっと・・・」と言うならもう歌詞を削るしかない。
せっかくイントロを作ったのだから一回だけしか聞かせないのももったいないので、
それをそのままエンディングに持って来てフルコーラスのデモ(田川くんに渡す段階)完成!!
「田川くーん〜これにギター入れて〜」
とメールでデータを送りつける。
打ち込みのギターではどうしても「メタル」感が出ないので、
デモ段階と言えどホンモノで弾いてもらわねばならない。
「デモやからね〜大体でええからね〜」
そしてこの言葉を必ず付け加えねばならない。
「ついでに仮歌も入れといて〜」
これが何より大事!!
一生懸命作ったデモでもワシの仮歌ではそれが原因でイメージが悪くなりボツになってしまう(笑)
こうして田川くんの完璧な仮歌によるデモが完成した(笑)
構成やアレンジのOKを待つ・・・
ところがこれがなかなか返事が来ない・・・
「ひょっとしてボツになったかなぁ・・・」
と思って待つこと数日、
「水木さんからOKが出ました!!これで本チャンレコーディングして下さい!!」
え?水木さんがOK出すの?・・・
・・・と不思議に思ったのだが、クライアントは既にOKを出していても、
やはり歌ってもらう水木さんが乗り気でなければこのプロジェクト自体が成功しないということだろうか、
兎にも角にもこのテの仕事では非常に珍しく「一発OK!!」
私も田川くんも飛び上がらんばかりに喜んで次の作業に入る。
まずはドラム録り!!
それが終わらなければベースとかギターとか上モノは被せられないのでこれだけは早急に録音する。
まあドラムは本職だし自宅スタジオでちょちょいと(でもないが)出来るのでツイキャスしながら録音した。
ドラムのデータを田川くんところに送って、あとは本チャンギターと、
ベースはエンジニアとして発注した仮谷くんに「弾く?」と聞いたら、
めんどくさがったのか「弾かない」と言うのでそれも田川くんに頼んだ。
ワシはここからは単なる「こだわり」なのだがやはりルーツである昔のアニソン風のストリングスと、
まあ現代っぽく(という言い方が既に古い)デジタルモノのシンセ等を被せる。
まあ「ダビンガー」が二カ所で同時にダビングしているようなものである(笑)
ストリングスは将来(あるんか?)本物を録音する時にも対応出来るように、
バイオリンパートとチェロパートで作っておく。
まあこの辺も「こだわり」なのだが、
「こだわり」がなくては100%「仕事」である。
「こだわり」があって初めて「音楽」になるのだから、
この「仕事」としては無意味なことにも思いっきり時間を使わせて頂く。
これにてワシの作業は終了!!
あとは田川くんの作業が終わり次第歌入れ!!!
というわけで初めてアニソンの帝王水木一郎さんの歌入れとやらをディレクションする羽目となった(緊張)
いや〜何も申し分ありません!!冒頭の「ゼーット!!」で全てOKでした。
その時に水木さんがおっしゃった。
「アニソンの流れを世襲しながら新しいものを大胆に取り入れた新しいアニソンの世界・・・名曲です!!」
恐縮です。
何千曲もレパートリーがあるアニソンの帝王が、
ここまでこの曲を気に入ってくれて、
私としては本当にこだわった甲斐がありました!!
この曲は本日こちらより配信開始!!
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