
2008年9月29日
香港でリハーサル
今回のリハーサルはBeyondのドラマー(今はシンガーソングライター)のWingの
マレーシア、シンガポール、台湾を廻るアジアツアーのリハーサルである。
リハーサル場所はBeyondのホームスタジオである二楼後座。
彼らの数々の名盤を生み出した伝説のスタジオであると言えよう。
ワシは思う。
どうしてワシは爆風が売れてる時にスタジオを作ろうと思わなかったのか。
どうして日本の数ある売れてるバンドは、
その稼いだ金をバンドではなく自分のためにしか使わないのか。
Beyondも日本のレコード会社と契約した時は山中湖のスタジオとかでレコーディングしたが、
「やっぱ自分たちのスタジオがいい」ということでやっぱ古巣のこのスタジオに戻って来る。
夕方になるとわさわさと集まって来て、
結局夜までダベって夜中からレコーディングやリハーサルをやる。
こんなマンションの一室で、
どんな防音をしようとよく苦情が出ないもんである。
思えばBeyondのような形で成功したバンドは日本にはない。
中国ロックの基を築いたと言う点ではラウドネスのようなものだが、
そのポピュラリティーはサザンオールスターズを超している。
日本のロックバンドはラウドネスのコピーや
セッションでラウドネスの曲をやることはあっても、
みんなで集まってサザンの曲を演ることはない。
Beyondの曲はロックバンドだったら一度はコピーしたし、
誰もが一度は通った「道」であると共に、
その楽曲はサザンよりもお茶の間に浸透し、
今だにショッピングモールで、街角で、
酒場で演奏する生バンドの演奏で、
その楽曲を聞かない日はない。
逆に日本ではサザンの曲はあらゆる街角で耳にするのに対して、
ラウドネスの曲を耳にすることは少ないことを考えると、
このBeyondというバンドのポジションは、
世界で例のないものであると言えよう。
今回はスケジュールがどうしても合わず、
当の本人であるWingは中国大陸での仕事に忙しく、
「ま、ええよ。お前おらんでもバンドでリハやっとくから」
とバンドだけでリハーサル。
「歌がないとよくわかんないなあ・・・お前歌え!!」
その辺にたむろしている若い連中にマイクを渡す。
誰でも歌える。
中国人でロックを愛する人間ならBeyondの曲を歌えない人間などいないのである。
ジョニーBグッドで有名なロックンロールの創始者、チャックベリーは、
噂によるとアメリカの各地をひとりでギターを持って廻ると言う。
バンドは地元のバンドを使い、リハーサルなんかやらない。
いきなり本番でギターを持って現れ、いきなりイントロを弾き出して歌う。
バンドがついて来れないようだったら
「お前ら、俺の曲も弾けないのか?」
でおしまいである。
「それでよくロックが出来るよなあ」
ということなのである。
ある意味、このWingも彼のオリジナルをやらず、
Beyondの曲だけを歌うならこういうことも不可能ではない。
いきなりステージに上がってイントロを弾き始めれば、
中国人ミュージシャンならばBeyondの曲を弾けないミュージシャンなどいないからである。
黄家駒が残した数々の名曲を、
それが生まれたこのスタジオで叩くとき、
えも言えぬ感情が沸き起こって来る。
彼が日本でワシのセッションを見に来て、
「凄いよ。毎月やってんのか?来月も絶対見に来る」
と言って、それが彼の最期の言葉となった。
ライブでドラムを叩く時、
いつも天国であいつが見ているような気がする。
時々降りてくる「神」は実はあいつなのかも知れない。
事実あいつは死んで「神」となった。
ワシはあいつが残した偉業を歌い継いでゆく。
(ドラムしか叩けんが・・・)
今日も天国であいつがそんなワシをほほえましく見ているような気がする。