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2019/04/11

末吉のドキュメンタリー映画

布衣のツアー映像などをまとめた「偶像(OuXiang)」というドキュメンタリー映像がもう800万ヒットとなっているらしい・・・

その監督が上海からまたツアーに同行している。
「今度はお前を撮りたいんだってよ」
LaoWuが私にそう言った・・・

(>_<)

いや、今回のツアーのテーマは「Funky還暦!!(笑)」みたいなもんだと言うからそれもいいんだけど・・・

嫌いなのよねぇ・・・撮影されるのって(涙)

小さい頃から写真嫌いでうちには「アルバム」というものがない。
カメラを向けたら逃げたりそっぽ向いたり・・・
うちの息子が小さい頃にカメラを向けたら同じ態度をとったので
「こんなんも遺伝するのか?・・・」
と愕然としたことがある。

その時の話・・・

爆風スランプがデビューして、
毎日毎日取材に追い回される毎日・・・

ほんま・・・嫌いやった(>_<)

まあでも慣れたっつうか、
一昨年だったか張嶺(Zhang Ling)のバンドで撮影した時に、
逆に懐かしくなって、慣れてない他のミュージシャンに色々アドバイスをしたというのも自分的には非常に興味深い・・・

しかしまた「密着取材」となるとこれがまた別の「しんどい」んやなぁ・・・(涙)

その時の話・・・

もうね、「魂を抜かれる」っつう感じ?・・・
消耗感がもの凄い(>_<)

基本的に「長く回していい部分だけを編集する」っつうのが整理的にダメなのよ・・・


昔ダウンタウンのHey!Hey!Hey!っつう番組に出た時、
番組上ではあれだけトークで盛り上がっている番組が、
実は「こうやって撮っているのか」と愕然とした記憶がある。

10分とかのトークの部分撮影のためにそれはそれは長くカメラを回す。

浜ちゃんだっけ松ちゃんだっけ、
何か話題を振る→河合が天然で返して受け答えられない→しーん・・・

しばらくしてまたどちらかが話題を振る→ちょっとウケる→ウケて終わったらしーん・・・

こんなことを何回か繰り返して、
私なんかの印象は30分だか1時間だか、
とにかく「しーん」としている・・・
まあ「どっちらけ」の映像の中から盛り上がっている部分だけを繋ぎ合わせて、あんな「盛り上がっている」トーク番組に作り上げるわけだ。

それまでの人生の全てを数分間に凝縮して、
同じようにそれをぶつけて来るミュージシャンと、生きるか死ぬかのセッションを繰り広げる「仕事」をしている私には、この作り方が基本的に全く肌に馴染まない。

だから、使うか使わないかわからないのにずーっとカメラを回されてるっつうのが苦痛で仕方がないのだ・・・


そんな話をツアー先でスタッフのヤオヤオと飲みながら話していた。

「その頃の話を聞かせて下さいよ。昔Funkyさんが明星(MingXing)だった頃の話・・・」

まあ「伝説」っつうのは尾ひれがついて独り歩きするもんだが、
ここ中国では、
「Funkyは昔は大明星で、金も名声もむっちゃあったんだけどそれをぶち捨てて中国に来たらしいぜ」
ということがロック界では伝説になっている。(笑)

とある歌手のバックでドラムを叩いた時の話、
その歌手(当然ながら大明星)がこんなことを言った。

「Funkyさん、明星やめてこちらに来てドラマーやってるんですって?どうしてやめたんです?明星ほどいい商売はないじゃないですか・・・」

いやね、辞めたっつうか事務所とケンカして辞めさせられたっつうか(笑)
でもね、今のこの生活の方が全然楽しいよ・・・

などと言ってもこれがまたなかなか理解してくれない(>_<)


まあ中国で語るなら、私がプロデュースした零点(LingDian)というバンドの話が一番わかりやすいだろう。

中国ロックの歴史の中で一番商業的に成功したバンド・・・
わかりやすく言えば「一番金を稼いだ」バンドである。

日本で言うとサザンオールスターズみたいなもんか?

そのアルバムのプロデュースをすることになって、
ドラマーの二毛(ErMao)は私にこう言った。

「Funkyさん、僕はもう1年近くドラムを叩いてないから・・・」

え?!(◎_◎;)・・・年間200本近くのライブをこなして荒稼ぎしているバンドのドラマーが?・・・

実は彼らが稼いでいるのは「ロックコンサート」ではなく「歌謡ショー」、
すなわち、全国で繰り広げられる数万人規模の歌謡コンサートに流行歌手たちと一緒に出演して、当て振りで何曲かヒット曲を演奏して莫大なギャラをもらって帰る・・・

そんな生活をしてたら、気づいたら「もう1年近くドラムを叩いてないなぁ・・・」ということなのだ。

まあそんな生活が好きな人もいるだろう。
でも私にとっては「何か」が違う。

女にモテたいからバンドを始めたヤツもいるし、
大成功して大金持ちになりたくて、
また大スターになって有名になりたくてというヤツもいる。

でも私の場合、あんまりそんなことは思ったことはなかったなぁ・・・

ただ純粋に、「Rock」というもの(Jazzもそうだが)を初めて聞いた時に、
「このスピーカーの向こうの人は神様だ!!」
と思った。

そして自分もそんな「神様」になりたいと思った・・・

でもひょんなことから気がついたら「街を歩けば振り返られる有名人」になった。

でも街で呼び止められてサインをねだられる、
「爆風の人でしょ。サイン下さい」
と来て、
「爆風の何やってる人なんですか?」
という人生のどこが面白いかねぇ・・・


昔何かの歌番組に出てた時に、
「ひな壇」というまたアホな(笑)場所で他の歌手が歌うのを見てなければならない。
ふと見ると隣は浅香唯ちゃん、その反対側はトシちゃん、
そんな大明星に挟まれて、アホ面してぼーっと座っている。

そもそも朝から晩までずーっと拘束されて、
何度も何度もカメリハだ何だと「当て振り」をやらされて、
とどのつまりに生放送でここにぼーっと座らされているのだ(>_<)。

業界用語で「抜き」というのだが、
赤いランプのついたカメラで出演者のアップを撮り、
画面がそのアップ映像に切り替わる。

隣の浅香唯ちゃんが抜かれて、
それが足元のモニターに映し出される。

生放送なのでそのモニターの映像が全国に今流れているわけだが、
浅香唯ちゃん、抜かれた瞬間にランプのついているカメラに向かって「一番いい顔」をする!(◎_◎;)

反対隣のトシちゃんが抜かれたら、
やっぱりその瞬間に、カメラ目線で例のあのジャニーズ顔の「一番いい顔」をする!(◎_◎;)

「スゲー!!こいつら・・・プロだ・・・」
と呆けてる私の顔が抜かれて、今度はそのアホ面がモニターに映し出される(>_<)

当時はインターネットも携帯もなかった時代なので、
家の留守番電話にまたたくさんの友人から、
「お前またつまらなそうな顔してテレビに映ってたなぁ」
とメッセージが入っている。

つまらないんだから仕方がない(>_<)
まあそれがすぐに顔に出てしまうところが「プロ」じゃないのよなぁ・・・


またある時はタケシの熱湯コマーシャルの番組に爆風で出た時、
まあプロモーションは中野と河合が中心で話して、
私と和佐田は「一応メンバー(笑)」みたいな扱いで二人の後ろでぼーっと突っ立っている。

中野も河合も面白いことを言える人間なので司会者であるタケシに突っ込まれるのだが、
そこに番組のレギューラーであるダチョウ倶楽部の上島が、
突然後ろから前に出て来て面白いことを言ってタケシにスリッパで頭をしばかれた。

会場バカ受けでそのまままた私たちの横を通って後ろに帰ってゆくのだが、
私はその時に見たのだ。

カメラに背を向けてこちらに向かって歩いて来た上島が、誰も見てないのに
「よっしゃー」
とばかりにガッツポーズをして帰ってゆくのを・・・

中野や河合にかなうわけがない!!
この人は「面白いことを言って人を笑かす」のの「プロ」なのだ。

そしてそれを頑張って、晴れ舞台としての「テレビ」がある。

浅香唯ちゃんもトシちゃんも、こうしてテレビに出る、抜きが来る、それが彼らの「夢」であり、その「夢」が実現した「晴れ舞台」なのである。

だが私は違う。
自分の「音楽」をプロモーションするために、
嫌で嫌でたまらないこの場に「プロ」達と一緒にいるだけの話である。

逆立ちしたってかなうわけがない・・・


「ここは自分の生きてゆく場所じゃない」
とどのつまりはそういうことである。

同じ勝負するなら自分が得意なことで勝負したい。
生きてゆくなら自分が楽しいところで生きてゆきたい。
ドラム叩いて(まあ作曲やアレンジやプロデュースも含めて)生きてゆけたらこんなに楽で楽しいことはないではないか!!

Jazzに目覚めて、それこそ「神様」のような先人たちの演奏を聞いて、
「あんなに叩けたら楽しいだろうなぁ」
といつも思ってて、
まあそこまではまだいけてないとしても、今でも相当楽しい(笑)

そんな自分のドラムを、この国の若者たちが、
それこそ昔私が目をキラキラさせて先人たちの演奏を聞くように聞いているのを見るにつけ、
小さい頃の「夢」は異国の地であるここ、中国で叶ったんだなといつも思う。


あのまま明星(MingXing)やってたら今頃自分はどうなってたかな・・・
などと考えるにつけ、私は本当に中国ロックとの出逢いに感謝をする。

「中国のロックにこれだけの大きな貢献をしてくれて・・・」
などとよく言われるが、むしろお礼は私の方が言いたい。

私は確かにこの国のロックに大きなものを残した。
でも中国ロックはもっと大きなものを私に与えてくれた。

中国ロックが今の私の「人生」を与えてくれたのだ。
心から「ありがとう」と言いたい。
そしてまだまだ私に与えられるものがあるなら、それを死ぬまで与え続けてあげたい。


そんな話をヤオヤオと飲みながら話していたら、
突然あの監督のことを思い出した。

「あの監督はFunkyさんに相当ビビってますからねぇ・・・」

そりゃ私はさぞかしいつも嫌な顔をしてたのだろう。
悪いなぁという気持ちと共に、
「こんな話をしっかりと話させてくれるんだったらインタビュー受けてもいいよ」
と思い始めた。


「監督に伝えといて〜」
そうヤオヤオに伝えてその日はお開きとなったが、
翌日監督が神妙な顔をしてやって来た。

「Funkyさん、ヤオヤオから聞きました」
そう言って真剣な表情でこんなことを話し始める」

誤解のないように話しておこうと思いまして・・・
この映画のタイトルの「偶像(OuXiang)」は決してFunkyさんが思ってるような「アイドル」って意味じゃないんです!!

私は監督の話を遮ってこう言った。
「わかってるわかってる、みなまで言うな。あんたの作品見たら全部理解出来るって!!」

日本で言う「アイドル映画」を撮るんだったら、
「農民ボーカル」などと言われてるLaoWuなんかを使いませんって(笑)

中国語で「偶像派(OuXiangPai)」「実力派(ShiLiPai)」という言い方もあって、それは日本の「アイドル」と「実力派」みたいなものだが、
私なんかもよく言われる「你是我的偶像!」という言葉はニュアンスが全然違う。

たいていの場合、次に「崇拜你(ChongBaiNI)」が続く。
「あなたを崇拝している」・・・まあニュアンスで言うと、私が小さい頃スピーカーの向こうの神様たちに対して抱く感情なのである。

この「偶像(OuXiang)」というドキュメント映画シリーズ、
次に私を撮るなら撮ればいい。

何でも協力するよ・・・


そう言った瞬間に、監督は連れて来てた2人のカメラマンを私に紹介して、瞬く間に3台のカメラがびったりと私にそれこそ「密着」し始めた!(◎_◎;)

それこそ私がコーヒーを買いに行く時にもついて来て、
外に出るまでコーヒー屋の玄関でずーっと廻している(>_<)

この時・・・

そして会場戻ったらいそいそとカメラをセッティングしてる監督・・・
あのね、カメラがボーカルじゃなくガチでドラムに向いてるじゃないの!!(>_<)

どこにいてもカメラがいる(涙)

もうね・・・やっぱイヤ!!やっぱ断る!!
これが延々ずーっと続くってやっぱ耐えられん!!(>_<)

そもそも取材モノって基本ノーギャラなので我慢のしどころを見つけにくいのよね。
他の仕事だったら「仕事だから」ということで対価に応じた我慢をしようと思えるのだが・・・


そんなことを考えてる時に、LaoWuがこんなことを言い出した。

「Funky!!決まったぞ!!12月24日、この偶像のイベント、今度はスタジアムでやる!!ストリングスオーケストラも入れるからお前音楽監督な!!」

!(◎_◎;)

まあええよ、「仕事」やし〜
その為の密着取材やったらまあ・・・それも「仕事」や思て・・・

・・・しゃーないなぁ〜・・・

監督〜絶対に顔に出るし、機嫌も悪かったりするけど、
それも含めて「ドキュメント」やからな、よろしくお願い致しますm(_ _)m

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