ドラムの叩き方
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2014年01月31日(金)
田川ヒロアキ考

先々週、に岡崎トリオを見に行ったら田川くんがゲストで出ていて、
久しぶりにかぶりつきでそのプレイを見てため息をついた。

むっちゃ上手いやん・・・(涙)

音程の絶対的な正しさはもちろんのこと、
ピッキングの正確さ、リズムの正確さはまるで機械のような・・・


と書くと大概の人は「機械みたいで心がない」という印象を受けるだろうが、
この辺に関してワシはちょっとドラムのことも絡めて聞いてもらいたいことがある。

ワシの人生は「ドラムが上手くなること」との戦いだった。

「上手い」というのは当然ながら「テクニック」の問題で、
まあその辺は人間は逆立ちしたって「機械」には適いようがない。

例えばサビに入る前に盛り上がってオカズを叩くと、
人間なのだから必ず早くなったりして次の一発で一生懸命帳尻を合わす。

機械だったらもちろんこんなことはないので、
じゃあその部分「感情」を押さえて正確に叩いたとしたら・・・

それって楽しい?・・・(笑)

「人間」は「人間」であるから素晴らしい。
どんなに機械的に上手くなっても人を感動させることは出来ない。

人を感動させるのは「人」以外にあり得ないのだ。

これをワシは中国人にはよく通訳の喋る中国語を例に出して説明する。
「ワシのヘタな中国語をお前らは一生懸命今聞いてるけど、
もっと上手い通訳が自分の話してたってこんなに一生懸命聞かねーだろ(笑)」

音楽の世界にも「ヘタウマ」というジャンルはある。
だがワシはそれを選ばなかった。

後述するが田川くんが「ブルース」に逃げなかったのと同じである。

完膚なきまでに人をノックアウトさせる上手さ・・・
つまりこの日の田川くんみたいになりたかったのだ。

どんなジャンルのどんな楽器のどんな人がやって来たってケチをつけられない、
そんなプレイヤーになりたかったのだ。

そんなプレイヤーを目の当たりにした時、
人はいろんな「言い訳」をして自分を正当化させようとする。

売れてるミュージシャンは、
「そんなことしたって売れないよ」
と言い訳して、「売れている」という点で自分を優位に立たせようとした。

そんなミュージシャンも周りにたくさんいたが、
今となってはそんな人は誰もこの年でもう音楽なんてやってない。

「歌謡ロック」のことを中国語で「流行ロック(流行摇滚)」と言う。

ワシは酔っ払って笑いながら中国のバンドにこんなことを言ったことがある。
「お前ら売れなくなったらロックですらなくなっちゃうんだ。ミジメな人生だなぁ・・・」

だからワシは「ロック」をやる。
こればっかりは周りがどのように変化したって「死ぬまで」続けられるもんだから・・・

まあ「ロック」というのはワシにとっては「ジャンル」の問題ではなくひとつの「精神論」である。

だからジャズ界に飛び込んで行ってジャズを叩いたりもする。
それが自分にとっての「ロック」だから。

人が出来てて自分が出来ないことがあると腹が立つのよね・・・(笑)

この「精神論」というのが実は「ヘタウマ」と「絶対的な上手さ」とをばしっと分けるアイテムとなる・・・
と言うか、時には上手くなるための大きな障害になったりする・・・

例えば前述のオカズの話・・・
熱い気持ちを持ってるほど機械に比べて正しくなくなってゆくのだ。

上手くなるということを金平糖に例えて説明したりする。

尖った部分を全部削って、それでまん丸になったって何の面白みがある。
凹んだ部分は後でついて来る!!尖った部分をもっと尖らすのぢゃ!!
そしたら最後にはもっと大きなまん丸になる!!

昔プロデュースしてた歌手と大げんかした時に、
「あんたのその性格を何とかしろ!!」
と言われたことがある。

ちょっと考えてワシは大笑いした。
「アホか!!俺がこの性格だからお前はどれだけ得をした?
俺がその辺のプロデューサーと同じような性格だったらお前なんかその辺の歌手以下でしかなかっただろうが!!」

この性格だから人に迷惑をかけたりトラブったりするが、
ワシの場合はもう「治らない」んだから仕方ない。

問題はこの化け物のような巨大な「感情」を、
押さえつけることなくどのように上手くコントロールするか、である。


自分の話ばかりしてしまったが、田川くんの話に戻そう。

彼と最初に出会ったのは二井原実がネットでこの動画を見つけて来てからである。

この時はあまりの衝撃に1週間ぐらい寝込んでしまった(笑)

まあその時にワシの中にはまた大きな「感情」が大暴れして、いきなり
「お前、北京に来い!!ワシがお前のアルバム作っちゃる!!」

まあこれで「ほな行きます」という人間も小畑秀光ぐらいしかおらんぢゃろ(笑)

その後、田川くんも八王子に引っ越して来て、
まあ相変わらず付かず離れず一緒にいろんな音楽をやっている。

いつも一緒にプレイすることが多かったので、
久しぶりにかぶりつきで聞いていろいろ感激した。

「感心する」プレイは多いけど「感激する」プレイは少ない昨今、
本当に心が揺さぶられるプレイだった。

彼のプレイはヘタしたら機械よりも正確でチューニングメーターよりも正確なのであるが、根本に「魂」がある。

中国でボディービルの選手と会ったことがあるが、その肉体美を見て
「どうやったらそうなれるの?」
と聞いたら、笑ってこう答えられた。
「そりゃファンキーさんみたいに毎晩飲んでたら無理ですよ(笑)」

なるほど・・・と思ってそれを紹介したミュージシャンにこう説教した。

「あいつの肉体を見たら、あいつが今までどう生きて来たかがすぐわかる。
俺らも音を聞いたらそう分かるようなミュージシャンになりたいもんだねえ」

田川くんのプレイにも、聞いていると彼がどう生きて来たかが伝わって来るのだ。

並大抵の努力でここまで弾けない。
けど本人は「いや〜そんな練習ばっかしてたわけではないんですけどねぇ」と苦笑する。

ワシもドラムの練習はそんなにしないが、
それでも結構音楽のことばっか考えてたりする。

小保方晴子(おぼかた・はるこ)さん(30)ほどではないが、
ワシだってお風呂に入る時でもデートしてる時でも音楽のことばっか考えてた(笑)

おかげで前の嫁から離婚されましたがな(涙)

流行りのテレビドラマの話題には一切ついてゆけず、
中野から「お前は歴代総理大臣の名前も知らないだろう」とバカにされたこともあるが、
そんな「つまらない」ことに時間を割くぐらいだったら楽しいことに時間を割いてた方がマシだ、ぐらいにしか思ってない。

田川くんもきっとそうなのだろう。
「弦に対してピックをどう当てたらどんな音が出る」
というのが面白くて仕方がなかったのだろう。

その「音色」にすでに「人生」がある・・・

アヴェ・マリア」という曲を弾いた時に、
ワシはとてつもなく「ブルース」を感じて涙が出て来た。

「ブルースだけは避けて通ってました」と言う田川くん、
それは「盲目であるからブルースに逃げてると思われたくなかった」からだそうだが、
ワシは逆に自分のルーツを「ブルース」だと思っている。

ロックもジャズもブルースをルーツとしてるように、
ワシはFUNKがルーツということはすなわちブルースがルーツだということである。

中国でスタジオミュージシャンをやりながら、
バラードだらけのあの中国歌謡をどう叩けばいいのかがわかった。

これは「ブルース」なんだ!!

アフリカから連れて来られた黒人達が、週に一回だけ音楽を許される。
どうせなら湿っぽいのはやめようぜ、楽しくやろうぜ!!

メジャーコード(7th)ばかりで出来ている底抜けに楽しい、
そしてとてつもなく悲しいその音楽がブルースである。

「お前だったらどうする?」
と聞かれたら、
「俺だったらロックをする」
と答えるだろう。

とてつもなく激しく、それでいてとてつもなく悲しい音楽をやるためには、
とてつもなく深い「人生経験」が必要である。

「ブルース」を否定していた田川くんが、
ここに来てとてつもない深い「ブルース」を弾けるようになった。

何かが吹っ切れたんか?・・・

「盲目である」ということにとらわれるのをあれだけ嫌がっていた田川くんは、
ワシが「爆風スランプ」であることを拒絶して生きてたのと似た心境だったのか?

どっちにしろそれとは切っても切れない関係なのだからと開き直ったのか?

あの時ふっと力を抜いて音を出すと心が引き込まれることを体得したか?
まるで金平糖の尖った部分からその奥の闇に引っ張り込まれるように・・・

どっちにしてもこの男だけはワシがドラムで突き詰めているものよりも先に行っている。
悔しいけどな・・・

そんな田川くんと来月はいっぱい一緒に演る。
彼の「生き様」を見届けに来て下され〜!!


◆2月1日(土) 八王子Live Bar X.Y.Z.→A
「届け被災地に!平和の風」

出演
ぱんちょマン、はっと、熱波 
田川ヒロアキバンド(Dr.ファンキー末吉、Bs.仮谷克之、Gt.Vo田川ヒロアキ)

時間:OPEN17:00 START18:00
投げ銭制(売上の一部を、ぱんちょマンが被災地に直接持っていきます)
別途、ミニマムで1000円の飲食代がかかります。

◆2月5日(水) 荻窪クラブスター
「富士山とU.F.O.」

op18:00/st19:00
\3.000/\3.500(+1d) 富士山とU.F.O.
田川ヒロアキ・トリオ 田川ヒロアキ(G/Vo) / 仮谷克之(Ba) / ファンキー末吉(Dr)
りまーも 高橋竜(Vo/Ba) / 土肥真生(Vo/G) / 森信行(Vo/Dr) ゲスト:YUHKI(Fh)
Grand Canyon 小林"Bobsan"直一(G/Vo) / 岡野"Tiger"諭(Dr)


◆2月8日(土) 新横浜NEW SIDE BEACH!!(旧サンフォニックスホール)
「横浜地獄メタル」

出演:《田川ヒロアキバンド》G Vo田川ヒロアキ Key.石黒彰 Bs仮谷克行 Dr.ファンキー末吉
《chemical reactions》G 松川純一郎 B.満園庄太郎 Ds満園英二
《WILD BAY 3》 G 足立祐二 B長谷川 淳 Ds菊地 英二

OPEN:17:15 START:18:00
前売:¥3,500(税込) 当日:\4,000(税込)
ワンドリンク別途¥500
お問い合わせ&チケット予約:新横浜NEW SIDE BEACH!! (045-474-2144/12:00~17:00 受付中。)


カテゴリ:おもろい話(日本), ドラムの叩き方
 
ドラムの叩き方
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