李漠(LiMo)の話
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2011年03月23日(水)
李漠(LiMo)と食事会

李漠(LiMo)」から電話があった。
どうしてもその日に一緒に食事をと言う。

ワシはその日はライブハウスで行われる
日本の震災に対するチャリティーライブに呼ばれていたのだが、
まあ出番前で酒は飲めないがリハ終了後に行けないことはない。

集まってみると彼女のバンドメンバーが勢揃いしていた。
彼女はこう切り出した。

「4月にね、イベントがあってそれに出るんだけど、
みんなスケジュール空いてるかなあ・・・
是非またみんなと一緒にやりたいんだ」

5月にも6月にもあるから是非お願いねと彼女は言う。
権利ビジネスのない、
コンサート収益だけが生活の糧であるミュージシャン達にとって、
もちろんこんなありがたい話はない。

「アイヤー、4月半ばは結婚式なんだよ〜」
などと言ってるメンバーにワシが突っ込む。

「じゃあそれはトラでワシが行ってやるからお前はドラム叩け!!
心配すんな嫁さんのことはワシに任せて心おきなく仕事してこい!!」
など和気あいあいに酒が進む。

「私の1枚目のアルバムはみなさんのおかげで無事に発売することが出来ました。
今度は2枚目を作ることになってます。
私はまたみんなと一緒に作りたいの。
制作費をもらったからこれみんなで分けましょ」

2000元(約2万5千円)が入ったさほど分厚くない封筒をみんなに配る。
ワシにもひとつ、うちのアホのエンジニアにもひとつ。

「おいおい、ワシらふたりでひとつで十分やぞ・・・」
と言おうと思ったがやめた。

ワシは知っている。
今やスターの仲間入りをした彼女のアルバムは、
当然ながら彼女の手を離れて会社が制作をする。

もう昔のようにアンダーグランドバンドじゃないんだから
制作費が全部で1万元なんてこともないだろうし、
制作費を彼女に託されるということもないだろう。

彼女はウソをついた。
きっとこの金は彼女があれから自分で稼いだ金か、
もしくは制作費ではなく次のアルバム制作のためにもらった彼女のギャラだ。

しかし彼女が言う
「またみんなと一緒に作りたいの」
という「気持ち」はウソではない。

この金はまさしく彼女の「気持ち」なのだ。

ワシにしても2000元でまたアルバム1枚作るなんて大赤字だし、
1曲2000元のミュージシャン達がこの金で10曲レコーディングさされるなんて
「仕事」として考えるとバカみたいな話である。

でもみんなありがたくこの金を受け取った。
彼女の「気持ち」を受け取ったのだ。

いろんな仕事をして、
いっぱいお金をもらうこともあれば
「これっぽっちかよ」という仕事もある。

でももらってこんな嬉しい金はない。
「1枚目の時はごめんね」と言って渡したのではない。
彼女はこの金で「未来」をつなげたのだ。

ワシもそんな彼女の「気持ち」をありがたく頂いた。

乾杯!!

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